ひねもす漫研、オタクかな (SFではなく、あくまでも私小説であると断言する!)
高尾つばき
序章
人は衣食住足りて、初めて趣味を持つ。
どれかひとつでも欠けているのにも関わらず「これがわたしの趣味なの」と、恥ずかしげもなく申される方。それは趣味とは呼ばない。
現実逃避、病気、もしくは洗脳された状態である。
まあ、それはそれとして。
人生のなかでもっとも有意義(自分勝手、自由気まま、と解釈していただいて結構)な時間を過ごすことができるのは、いつだろう。
十人中八人は「大学生時代だ」と思われるのではないだろうか。
とにかく二十四時間が己の配分次第で、思う存分に使えるのだ。もちろん学生の本分である勉強はしなければならないが。
自主休講と称し、パチンコ、麻雀、コンパ、旅行、アルバイトと好きなように過ごせる。
奨学金を得ながら勉学に
はずであると思いたい。
また大学にはいろいろなクラブ活動が存在しており、体育会系及び文化系と大きく分けることができる。
最初に話はもどるが、学生の本分は勉強でありクラブ活動は言ってみれば趣味の
特に体育会系のクラブに所属して、将来はその延長線上でプロになるんだという方も大勢いる。文化系クラブでもプロを目指すための修業として、部活動を行っている方もいる。
だが大半の学生は、趣味としてクラブ活動に参加していると言っても過言ではない。
いや断言できる
趣味? 待て待て。衣食住には充分満足していると答える大学生って、どれくらいなのだろうか。
本題に入る。
衣は年中同じ、食はオカネが無ければ水だけを飲み、住は友人部屋の押入れを間借りし、本分である講義を勝手に自習休講し、寝る間を惜しんでも趣味に没頭する連中がいる。
ここ私立
オタク、と呼ばれる人種の集合体のひとつだ。
一回生の新入部員から四回生まで、男女合わせて約三十人が所属する歴史あるクラブだ。約、とつけたのは籍を置いていながら年に数回しか顔を出さない連中、幽霊部員もいるからである。
妄想の世界へ入り浸り虚構と現実の線引きがもはや困難であり、二次元の世界を唯一の居所とし、安堵する約三十人のオタクたち。
彼ら、彼女たちは自分は普通の学生であると思っている。人より少し漫画が好きなだけ、そう信じている。
ところがどっこい、そうではないことに部員たちは誰も気づいていない。
この区には国立のN大学を始め、私立の中京都大学、
アパートや飲食店、麻雀荘にいたるまで、街中に学生御用達のお店がそこかしこに軒を連ねている学生街である。
中京都大学のキャンパスは他の大学のそれと、一点だけ趣が異なっている。キャンパスの中に三百年の歴史を持つ密教系のお寺、
正確に言えば交渉寺を取り囲むように大学が敷地を広げているのだが、学生たちは研究棟や運動場、武道場のある場所へは交渉寺の境内を横切って行くことになる。
お寺である以上、もちろん墓地も併設されている。
外灯のほとんどない境内から墓地へ抜ける道は、結構いや、かなり恐怖心をあおってくれる。
ただ不思議なことに、こういうシチュエーションの場合必ず語られるであろうオカルトめいた逸話が、まったく無い。無いことが代々の学生によって語られているという、摩訶不思議な都市伝説となっていた。
つづく
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