最終章 ゆっくり、したいの。
1.
土曜日。華は朝の食卓で、目玉焼きをフォークで黙々と突いていた。存外に冴えている彼女の意識の中で、この5日間のことが自然に流れる。
かつて華の人生で、これほど平日が早く流れなかったことがあっただろうか。というくらい、登下校も、授業も、友人たちとのおしゃべりも、ゆっくりと過ぎていった。
気分爽快、だったわけではない。生理が木曜日に終わるまで頭の片隅に鈍痛がはびこっていたし、苦手科目である数学のミニテストは惨憺たる成績だった。チサトや五月と3人で『このままじゃヤヴァイ』と復習会を行ったほど。
臨時講師役のクラス委員には迷惑をかけたが、舞花から仕入れた情報を元に、『ピジョン・ブラッド』のスイーツで釣ってどうにか復習を終えることができたように思う。
ああ、そういえばクラス委員に言われたっけ。
『わたしじゃなくて、カレシに頼めばいいのに』
誰のことかしら、ととぼけて失笑を買ったが、そんなことを頼めるような間柄じゃない。
そう、できないのだ。バイトの時はあんなに和やかにしゃべることができたというのに。
あの夢のせいだ。
雨の裏山で抱き止められて。夕暮れの道端で背中をさすられて。彼の大きな手で胸を拭かれたお返しに、彼の胸を拭いてあげて。自転車から飛び降りたところを抱きしめられて。優しく彼にお姫様抱っこされて。
そんなこんながグルグル繰り返される、夢。彼の体温や手触りまで再現されたそれを、華は巫女さんバイトの夜に見た。
それ以来、華は彼を直視できないのだ。
彼の穏やかな眼差しは時々感じる。それが嬉しくて、なおさら華は西沢のほうを振り返れない。結局金曜日の下校まで、彼とは目を合わせることすらできなかった。
自己嫌悪に陥ってベッドの枕に顔を埋めていた華のもとにメールが届く。誰かと見れば、西沢の姉からであった。
「そういえば、バイトの帰り際にアドレス交換したっけ」
独り言を言いながら開封したメールの文面。それは、華の消沈していた心に点火の火花を散らすに足るものだった。
『舞花ちゃんの逆襲』とタイトルされたそれは、舞花が明日土曜日も朝から神社にやってきて、一日中西沢に張り付くつもりらしいという内容の、正直言って“煽る”もの。
「……懲りない子」
その静かな感想そのままに、華は休日の朝食を味わっていた。
「華、ごはんのお代わりする?」
母の表情は穏やかな笑顔。よそってくれたごはんを、梅干しをおかずに頬張る。勢いで皿に残っていた目玉焼きも掻き込むと、
「もう、はしたないわね、華。西沢さんに幻滅されちゃうわよ?」
言われて、華は止まった。眼を閉じ、黙々と咀嚼して。
「そうかな……?」
「そうよ」と母はなぜか自信ありげに頷いた。
「ゆっくり食べなさい。いざ決戦、ていう時にお腹を壊してたら困るじゃない」
華は母の言葉の意味が分からない。
「今日、巫女さんのバイト、行くんでしょ?」
ぎゅっ、と心臓が締め付けられる。怖いんじゃない。
彼に、会いに行く。それだけで、ただそれだけで。
押し黙ったままの華に、母もまた黙って熱いお茶を出してくれた。それをゆっくり飲んで、華は手を合わせた。
「ごちそうさま」
よし、行こう。華は勢いをつけて立ち上がった。洗面所で今までより入念に身だしなみを整えて、スキップも軽やかに階段を上がる。
華はやっと、自分の気持ちに素直に向き合えたのだ。
西沢君に、いや、昴君に会いたい。会って、もっといっぱいおしゃべりがしたい。もっと一緒にいたい。そこから先のことは、……ぅぅぅ、だけど。
そうだ、このあいだフェイバで買ったあの服を着て、行ってみよう。向こうでは巫女服に着替えちゃうけど。もしかしたら、見てもらえるかもしれないし。
華は浮ついた気分で自室のドアを開け、立ち尽くした。
部屋の中、ちょうど中央に、一人の女性が立っていた。華がついさっきまで考えていた、まさにその恰好をして。
着心地を試すかのように体をひねっていたその女人が、髪型まで華と同じ女神が華を見止め、艶然と微笑む。
<<遅かったの。さあ、参ろうぞ>>
華は事態が呑み込めない。目の前の女の子はまるで――
「コ、コヒガミさま? いったい――」
<<わらわは――>>
女の子は華に正対して、ニコリと笑った。
<<田仲華じゃ>>
言い終えて、彼女が近づいてくる。音もなく。その視線に射すくめられて、華は動けない。何度もやられて、今度こそ引っかかるまいと思ってたのに。嫌、いや! 助けて昴君!――
華の意識はそこで途絶えた。
2.
西沢は、丸太小屋のリビング、その中央にあるソファに腰かけて、今日何度目かわからない深いため息をついた。
今日は土曜日。華がバイトに来る、はずの日。なのに。
『昴、お前は山小屋行きだ』
朝一で家にかかってきた電話に応対した、それが祖父の指示だった。
テンションが上がらないのは、別の理由もある。
(やっぱり、怒ってるんだよな)
月曜日からこっち、華は西沢とまったく目を合わせてくれなかった。それはもはや『避けられてる』という単語を想起せざるを得ないくらいに、徹底したものだった。
彼女の周囲の女の子たちも、先週まであんなにキャイキャイ騒いで、あれこれとアドバイスをくれていたのに。今週はまったく騒がれずじまい。おかげで西沢の読書も大いに捗ったが、問題は解決していない。
誰も、何も、言わない。まるで、西沢と華のことに関して何がしかの情報が出回ったかのように。
(やっぱ、あれかな? 舞花のことかな?)
まさか、若葉祭りの時に華に見られていたなんて。小さい頃から一緒に遊んでて、いまだにその延長でふざけていただけだったのに。
いや別に、舞花のことはちゃんと説明したはず。だから午後は普通の態度だったし。
西沢は、頭を抱えた。今更メールで問い合わせもできない。そう、彼は華の態度の変化に戸惑っているうちに、メールをするタイミングをすっかり逃してしまっていた。
直接通話なんて恐ろしい真似は、もうできない。あの日の午後の記憶は、西沢の心に深々と突き刺さって疼痛を起こす棘と成り果てていた。しかも、その晩に震える指でタップしてまでかけた電話には出てくれずじまい。
もし、もしまた蛮勇を振り絞って電話して、華を怒らせたら……
(やばいな。やばい)
今度は恐らく、クラスの女子連中は敵に回るだろう。というか、彼女らが今まで西沢に好意的だったのが、まるで夢のような幻のような事態なのだ。
(舞花を呼び寄せて間に割り込まれた時も、物凄いにらまれてたし。ああもう! なんであんなことしちゃったんだろ、オレ……)
西沢は深く深くため息をついて、ソファに身を沈めると天井を見上げた。
(うまく、いかないもんだな)
まだ10時。今日は長い一日になりそうだ。そう思い、またため息をついた西沢の耳を、ドアチャイムの電子音が打った。
3.
西沢と同じソファに座ってコーヒーに口をつける華を、彼は黙って見つめていた。
来てくれた。しかも意外と機嫌がよさそう。そのことに安堵するとともに、西沢の鼓動は跳ね上がる。
聞かなきゃ。どうして眼を合わせてくれなくなったのか。その回答者が向こうからやって来てくれたのだから。でも、口がまるで糊付けされているかのように開かない。
「……西沢君」
ドクンとより大きく、西沢の心臓が跳ねる。
「あの、ごめんね」
「え?! あの――」
西沢の戸惑いに構わず、華は続けた。
「ここ最近、西沢君といろいろあったでしょ? それで、その、西沢君を見ると、つい気恥ずかしくなっちゃって」
あ、いや、と口ごもって。西沢は固まった。華が身を寄せてきて、西沢の右手を彼女の両手で優しく包んできたのだ。シャンプーの香りだろうか、いい匂いが鼻孔をくすぐる。
「でも今日は、教えてもらいに来たの」
「な、何を?」
「西沢君のこと、もっといろいろ」
上目遣いの華にそこまで言われて、西沢は気付いた。いや、近づかれてというべきか。
「……コヒガミさま、田仲さんで遊ばないでくださいよ」
言われて、華がすっと居住まいを正す。
「なんじゃ、気付いておったのか?」
「いや、ていうか、前髪立ってますし」
おお、と前髪に手をやる華を見て、西沢は少し腹が立ってきた。
(なにが、おお、だ。あんなことがあったのに、その当人に同調して遊んでるなんて)
そのことを西沢があげつらおうとしたが、コヒガミのほうがわずかに早く口を開く。
「ならば話が早い。西沢よ。頼みがあるのじゃ」
「なんですか?」
コヒガミはにこりとすると、切り出した。
「ぬしの精が欲しい」
……え?
「な、な――?!」
「なぜか? ほれ、先日華が説明しておったろう」
コヒガミは顔色一つ変えずに説明を始めた。
ヒトの我欲が溜まることおよそ100年、もはやコヒガミの身は重く、穢れたものになっている。これを浄化して新しい御神体を成すために、
「生娘の身体と同化し、我ら神に仕える血筋の者、それもいまだおなごを知らぬ男の精を胎内にて受け取る必要があるのじゃ。そなたの曽祖父が100年前に、わらわにしてくれたように、の。
と、いうわけで――」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!!」
西沢は両手を前にかざして、自分ににじり寄ろうとするコヒガミを――華の姿と声で迫られて、どきどきしながら――止めた。回らない頭を必死に回転させる。
「いきなりそんなこと言われても……ていうか、そんなことしたら、はな――じゃない、田仲さんの身にもしものも事があったら、というか、その」
「だーいじょーぶ」
またにこりとコヒガミがポーチから取り出し広げたのは、何やら折れ線グラフの書かれた紙であった。グラフ下の今日の日付と思しき数字に花マルが書かれたものを取り出し、自分の胸の前につまんで広げる。
「華は今日、安全日じゃ」
「え、えぇ?! いやいやいや、ていうか、その」
「よいではないかよいではないか」
「いい加減にしてくださいよ!!」と西沢は、さらに鼻息も荒く迫ってくるコヒガミに向かって声を荒げた。
「田仲さんがかわいそうだと思わないんですか? こんな、こんなオレなんかとそんな無理やり――」
沸騰する西沢に冷や水を浴びせたのは、真顔に戻ったコヒガミの一言だった。
「華は、ぬしを好いておるぞ?」
西沢の怒鳴り声でビリビリしていたリビングの窓ガラスが、ようやく震えを止めた。
「なんじゃ? ぬしもか……」
顔をしかめてつぶやいた後、コヒガミは一転眼を三日月形に細めて話し始めた。
「ぬし、不思議には思わなんだのか? 月曜日から急に華が挙動不審になったことを」
「それは、思いましたよ」
「そうであろ? 実はな――」
華は、西沢の怒鳴り声で目を覚ました。
そこは、かつて体験したあの暗闇。しかし此度は違う。
<<昴君の声が聞こえる!>>
声のするほうへ、華は進む。進める。足が動くのだ。
やがてすぐ、華の前に白い亀裂が現れた。その細い隙間から漏れ聞こえてくるのは、
<<昴君と……わたしの声? 違う、コヒガミさまがしゃべってるんだ>>
華は一片の迷いなく、亀裂に手を入れて左右に引き裂こうとする。
<<この……硬い……>>
『ぬし、不思議には思わなんだのか? 月曜日から急に華が挙動不審になったことを』
『それは、思いましたよ』
『そうであろ? 実はな――』
<<開かない……なんの話をしてるの?>>
『日曜日の晩、華は夢を見たのじゃよ』
<<!!>>
華は愕然とする。
『夢、ですか?』
<<ダメ! 昴君! 聞いちゃダメぇ!>>
『そう、夢。ぬしと華との触れ合いの記憶の、ダイジェスト版じゃよ。華の視点に大分脚色されておるがの』
『あの、それと挙動不審とどういう関係が……』
何も知らぬ西沢の質問が、華を焦らせる。だが亀裂は開かず、コヒガミの語りもやまず。
『目が覚めたら、大変だったんじゃよ。濡れ濡れで』
『? ……寝汗でですか?』
くっくっく、とコヒガミの笑い声。
『鎮め方を知らぬというから、わらわが手ほどきしてやったらの、それから毎晩サルのように――』
<<いやあああああああああああああああ!!>>
華は絶叫し、亀裂はこじ開けられた。
「いやあああああああああああああああ!!」
ようやくおぼろげながらも説明を理解した西沢の眼前で、嗜虐的な表情から一転、羞恥と動転で真っ赤になった華が表に出てきた。
「コヒガミさま! なにサクッととんでもないこと言うんですか! すば――西沢君、うそ、嘘だから!」
「ぬう」と今度は真顔に変わる華の顔。
「同化した状態から表層に顔が出せるとは、やはりぬしは――」
「もうこんなバカなこと止めてください! 西沢君だって迷惑してるじゃないですか!」
「迷惑じゃないよ」
自分の口を突いて出た言葉に驚く。だが、西沢は思いついたのだ。華を助ける方法を。
西沢は、まっすぐコヒガミ――いや、華を見て告げた。
「迷惑じゃないよ。オレ、華ちゃんのこと、好きだから」
華の目が、驚愕で一瞬だけ見開かれ、すぐに潤んだ。真っ赤になりながら、ちょっぴりうつむき加減で返してくる。
「ぅぅぅ……え、えと、その……」
ダメかな?
「あ、ありがとう。その、わたしも、その……す、昴君のこと、好きだよ。だから、その、背中とか擦ってくれてうれしかったのはほんとのことだし……」
そこまで聞いて、西沢は頭を下げた。
「このあいだは、その、ほんとにごめん。舞花とは子どものころから遊んでるから、ついああなっちゃうというか……」
「ううん」と華は真っ赤なままの顔を横に振ってくれた。
「それなら、しようがないよ。わたしもごめんね、ヒステリックになっちゃって」
西沢は、もう一度華を助けるためのダメ押しを行う。
「で、その、つ、付き合ってくれるかな? こんな人付き合いの悪いオレだけど」
顔から火が出ているように熱い。その顔を決然と上げて、はにかんだ華の薄紅色の唇をどのくらい見つめていただろうか。
「こちらこそ! よろしくお願いします」
西沢が一仕事終えて思わず吹き出すと、華は心外そうにぷぅっと膨れた。だが、許してくれたのだろう、同じくクスクス笑い出した。 さて。
「コヒガミさま」
西沢は居住まいをただし、華はコヒガミの澄ました顔になって、これもソファに座りなおした。
「そういうわけで、オレ達付き合うことになりました」
「うむ。重畳であるな」
「それでですね、オレ達、順番にというか、ゆっくりと仲を深めていこうと思うんですよ。ね? 華ちゃん」
目元を赤くした華がこくこくとうなずき、すぐに白面の仏頂面に戻る。
「ほう」
「だから、コヒガミさまが希望するものは、まだ当分先じゃないと差し上げられないんです。というわけで、ちょっと華ちゃんから抜けてもらっていいですか?」
「できぬ」
コヒガミの木で鼻をくくったような即答にむかっ腹の立った西沢だったが、続いての説明に愕然となった。
「できぬのじゃ。なにせ同化しておるからの」
「え? だって、同調していない時は華ちゃんの背中とか肩に乗ったりしてるって……」
「じゃから、"同調"ではなく"同化"なのじゃ。もう華の肉体や精神だけでなく魂にまでもガッチリズッポリ、なのじゃ」
コヒガミが続ける。
背丈、体つき、そして、髪型に顔。華に同化するための変化を己が容姿に対して徐々に行い、それが今朝完遂されたがゆえ、こうして今ここに所用を果たしに来たのだと。
明らかに動揺した華が震え始めた。痛ましいばかりの金切り声でしゃべり始める。
「え? え? じゃあ、願掛けの処理は――」
「うむ。このまま行うことになるのぉ」
「いや! そんなのいや! また誰かの記憶が、記憶なんて見たくない! いや! 離れて!」
「そう言われてものぉ」
涙目とすまし顔を繰り返し、相克を始める華とコヒガミ。華の声が絶叫に限りなく近くなったとき、西沢は想定していた最後の手段に出た。苦しんでいる華を救いたい。たとえそれが“乱暴”な手段であっても。
身悶えして暴れている華をぐいと抱きしめ、そのまま西沢がさっき見つめていた、あの唇を自分のそれで塞ぐ。心の震えができるだけ彼女に伝わらないように。できるだけ、優しく。
もがきから硬直に変わり、西沢のTシャツを握り締めていた華の体から、やがて力みが抜けていった。
4.
15時ももう半ば。華は山小屋の玄関から出ると、くるりと振り返った。まだ生乾きの自分の髪を手ぐしで梳きながら、玄関先まで送ってきた西沢に話しかける
「あ、あの……今日はありがと、ね。その……お風呂まで貸してもらっちゃって」
ああ、いや、と盛大に照れてる彼が可愛い。
コヒガミは彼女の望むものを受け取って、華の身体から去った。
<<華よ、ぬしの望み、かなえてやったぞ。それから、西沢に大儀と伝えておいてくれ>>
浄化された御神体から白い輝きを発しながら、部屋の天井に吸い込まれるように消えていくコヒガミの、微笑みの伝言がそれだった。
それから時は流れて、もう下山しないといけない時刻である。華は、名残惜しさを込めて言葉を継いだ。
「明日はお料理教室があるから来られないけど、その……」
「あ、うん。じゃあ、また月曜に、学校で」
その言葉は、華の意表を突いた。と同時に、恥ずかしさで顔が真っ赤になる。何を考えてんのよ、わたし。これじゃまるで……
「昴君の意地悪……」
「え? え? なんで?」とキョドる彼。どうやら素でわからないらしい。
「もぉ、ほんとにぼっち君なんだから」
ふてくされる振りをして、華は西沢の胸倉を掴む真似をした。
「意味がわからないんだけど……」
口を尖らせた西沢の顔が、華に体を寄せられてどぎまぎした様子に変わる。
「昴君?」
「ん? なに?」
彼を見上げて、華は微笑んだ。
「ゆっくり仲を深めたい。コヒガミさまにそう言ったじゃない、昴君」
だから、と華は彼の目を見つめた。
「ゆっくり、したいの。昴君と。だから、ね?」
やっと脳に届いたらしい。彼の目が見開かれて、また照れて。彼の顔がそーっと華に近づいてくる。
華も精一杯背伸びをして、彼に顔を近づけて。
華と西沢の唇と唇が触れて重なる。遠くに聞こえるは、鴉の鳴き声。
このまま、時が止まればいい。華の思いに鴉が答えたかのように思えた。
が。
「ふええ~、また飛ばされた~」
「やっぱこの時間にやっちゃダメだったんだよきっと」
聞きなれた親友の声が、華の耳朶を打つ。
「え!?」
止まる足音に続いて聞こえるのは、チサトと五月の悲鳴にも似た歓声。
<<親友たちに事後報告する手間を省いてやったぞ。ククク――>>
御神木のほうから、コヒガミの笑い声が聞こえた気がした。
ふたつ文字 うしのつの文字 騒動記 終
ふたつ文字 うしのつの文字 騒動記 タオ・タシ @tao_tashi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます