まどろみに見た夢


午後のまどろみに見る夢は

 ゴンドラに乗った少年の頬

時計塔が昼の鐘をならすと

 花屋の店先から鳩が飛んだ


水路を行き交うゴンドラと

 薄い水色の空に浮かぶ雲は

同じリズムでゆっくり流れ

 時計を忘れた僕は安心する


広場を抜けて市場を歩いて

 果実と野菜のまぶしい色と

誰かを呼ぶ声と人の賑わい

 今この時の生きている実感


喧騒と雑踏に揉まれ右と左

 思いつきで路地を折れれば

自転車がビュンと追い越し

 丘の向こうへと駆けあがる


南風と若草色の新しい季節

 柔らかな花々と新緑の空気

遠くそびえる険しい山々も

 陽光にその白銀を輝かせる


ふわふわの下草に寝転ぶと

 まるで生まれ変わった感覚

空は青くまあるく広がって

 泣きたい気分で少し眠った


午後のまどろみに見る夢は

 ゴンドラに乗った少年の夢

時計塔が午後の鐘をならし

 今日の昼寝はもうおしまい

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言葉の実験ノート あいはらまひろ @mahiro_aihara

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