第16話【死相】
ポタリ、ポタリと頬を伝う雫が落ちてアスファルトに濃黒色のスポットを生む。
噴き出した汗が
凄まじいまでのエロチシズムが、化け物達の戦場と化した街角に場違いに溢れ出していた。男が見ていれば、その異様さも忘我の彼方に置き去りにし、魅入っていたかもしれない。
吸血鬼の持つ魔魅の力か。
「お前達の遊び相手は私」
いつものように髪を掻き上げながら囁くように一言。まるで警告に聞こえない警告を与えながら、
高まる
人体は元々、微弱な電気を発している。心臓・脳・筋肉──ありとあらゆる部位で発せられるその
実用化どころか理論すら組み上がっていない兵器を、自らの身体で体現できる。不死身の化け物が持つ特殊能力の一つ。十分な
「多少なりとも同情はするわ。いくら人の道に外れた子達でも、自分の意思と関係もなしに
パチパチと、
「
そこには何もなかった。怒りや憤りに満ちた言葉でも、憎しみや哀しみを帯びた言葉でもない。
当たり前の事実をただ並べているだけ。まるでその日の天気の話でもしているような口調。
コレが
「私達は所詮、過去の遺物。
それと対峙した怪物の正体。
「残念だけどもう終わり。
とんっと、
──ゴアァァァァァァァァァッ!!!
二匹の生物兵器が咆哮を上げた。
人を怪物へと変えた薬物に狂化された生存本能と戦闘衝動が全身に駆け巡り、同時に迎撃の体勢をとるが、遅い。
「ふっ」
腹腔に溜まった息を鋭く吐きながら、舞うように怪物の間を縫った。
圧力を極限まで高めた雷刃が瞬間的に解き放たれる。
先程の一撃とは比べ物にならない強振が二発。
──轟! 轟!
その音は冥府の門を開く片道切符。
二匹の怪物は全身の肉を灼かれ、血を沸騰させてゆっくりと崩れ落ちた。
その場に残るのは血まみれの一つと燃え盛る三つの肉塊。
逃げ惑っていた人々の姿は既になく、化け物同士の戦場は一転して静けさを取り戻していた。静寂の中、ぜぇぜぇと荒い呼吸だけが響く。
「……まったく……余計な体力……使わせて……」
ぼやきの中に色濃い疲労が滲み出ていた。
最強の刃は両刃の剣でもあるのだと、その力無い声で解らぬ者はいないだろう。
頬は
死相。今の
それほどの消耗を迫られるだけの
不死の筈の女が漂わせる死の雰囲気は、それでも尚、美しかった。
Anti! 新一郎 @shin-ichi-ro0415
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