第3話

 言語が翻訳されていると知った堂見は、走ってジクルマの建物を抜け出した。

 その一方で、少女は自らの住む村の草原の上で友達と何かを飲んでいた。

 友達は肩までの青緑色の髪を後ろに束ねていて、服装は暗めの青色が基調となっている。

 細い剣を置いている事から、少女の仲間と思われる。


 飲んでいるのは、暗い茶色で透き通った飲み物だ。

 「今日のシクルお茶の味はどうですか?」

 少女が淹れたシクルを少しだけ口にして、友達はこう言った。

 「うん! 苦味とかも丁度良いし、おいしい!」

 「やっぱり、ロフソエーニェ・シクル枯れた木の枝茶はおいしいですよね」

 「ココラの作るシクルって、どれもこれも独特でいい感じだよね」

 「そうでもないような……」

 「……少しは自分に自信を持とうよ?」

 2人が会話をしていると、ジクルマの建物から出てきた堂見が村にやってきた。


 「なんだ、ここ?」

 堂見は村を歩き始めた。

 一本の土の道を歩く。

 「どこまでも緑なんだな……」

 自然に囲まれたこの村は、緑色の景色が広がっている。

 その上、地域の条例で赤色やオレンジ色のスェクヘン塗料が使えない。

 そんな村の一本の道を歩いていると―――――。


 「誰だ、あれ……?」

 堂見の発言は、メデルソ語に翻訳されている。

 堂見は少しづつ、ココラという少女の前に向かって歩く。

 「あっ……ああっ……」

 ココラは異様な声を出し、後ずさる。

 数日ほど前にも似たような肌の男がやって来て、それを殺してしまったからだ。

 「どうしたの?」

 「前にも……似たような人が……」

 <誰なんだ?>

 ココラの脳内には、転生してきた故人の存在が浮かび上がった。

 そして、後ずさりしかしていなかったはずが、何もないのにも関わらず姿勢を崩し、杖を右手から放してしまう。

 「あっ!」

 「なんで逃げてるんだ?」

 するとココラは杖を握りなおし、斧の部分を向け始めた。

 「なんだ? もしかして、戦うつもりなのか……?」

 堂見がそう言うと、ココラは首を少しだけ上下に振る。

 「戦うのはまずいんじゃ……」

 仲間らしき人物は止めようとするが、道見はココラを殴ろうとし始めた。

 結局、2人は戦う事になる。


 「お前を殺してから進めという事か?」

 「あなたのような人間に、まともな人というのを聞いた事がありません!」

 「こっちの話が通じてないなら……仕方がないな!」

 そう言うと、互いに前に走り出す。

 「おらあああああ!!」

 道見は握った右手を向け、

 「はああああああ!!」

 ココラは杖の斧の部分を向ける。

 そして、2人が交錯する―――――。


 斧は道見の脇腹をかすり、道見の右手のパンチはココラの腹に当たる。

 走っていた勢いも相まって、パンチはかなり強力なものになっていた。

 「うっ……」

 ココラは気絶する。

 吐血はないものの、パンチに耐えきれなかった。

 「やりやがったな……」

 道見も、杖の攻撃で右脇腹の傷から出血している。

 槍の部分も当たっていたため、二つの傷がある。

 「ここで殺るしかないようだな!」

 道見は気絶したココラに、追い討ちをかけようと走り出した。

 「……」

 まだ動けない。

 それでも堂見は、腹や顔を殴り始める。

 「結局! 緑色の奴には! 屑しかいない!」

 声を上げながら、腹を何回も蹴る。

 ココラの体には、既に傷やあざが出来ていた。

 「思い……通り……」

 どうにか起き上がるが、堂見の攻撃は止まらない。

 「死ぬまで殴り続けてやる!」

 堂見は起き上がった所に、力を入れて腹を殴る。

 「かはっ!?」

 またしても、後ろへと吹っ飛ばされた。

 それでも、立ち上がる。

 そして戦いから十数分が経ち、堂見には疲れが見え始めた中で、ある選択に出た。

 「アスァリ癒すハルトものリーゾ・ヘン・ケルスィ自分とその周囲……」

 フォベの詠唱だ。

 「なんだ? 回復か?」

 

 そして、詠唱は成功。

 魔方陣の中心からは放射状に緑色の光が広がり、ココラと堂見の体はその光に覆われる。

 すると、堂見の体に異変が―――――。

 「なんだ……これ……」

 血ではなく毒が生成される体になる"回復魔法"が、堂見にも通じていたのだ。


 すると、堂見はその場で倒れた。

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みんなが森に身を投げた TNネイント @TomonariNakama

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