第2話
「お、おい!」
故人は必死になって、少女から離れようとする。
「
しかし、言葉が通じていない。
故人は抵抗したが、結局森の中に入れられてしまった。
しばらくしたところで、少女は故人の右手を放す。
「何がしたいんだよ!?」
故人は逃げようとするが、少女は魔法の詠唱を始めた。
「
もちろん、詠唱もメデルソ語。
故人と少女の回りを、緑色の魔方陣が囲む。
これはアルチ国ではよく使われる回復魔法で、「
フォベは「アスァリ」「ハルト」の後に対象などの単語を入れると発動する。
だが―――――。
「ぐっ!?」
カナエア以外の世界の人間にこの魔法を使うと、魔法をかけられた人間は猛毒が生成される体になり、僅か数秒で死に至る。
地球から転生してきた故人も、フォベをかけられてから数秒で死亡してしまった。
死体を見た少女は、こう呟く。
「
そう呟きつつ、少女は先ほどまで座っていた切り株の所に戻る。
「
その後、少女は一旦森を出て、田舎にある自宅へと戻った。
一方で、ジクルマはあるミスをしていたという。
「
「……
ジクルマも、様々な世界の故人の魂からカナエアに転生させる魂を選んでいる。
しかし、ジクルマは先程地球から転生させた故人が少女に殺された事を知らない。
あまり外出する事が少ない上に、現在のアルチ国の企業の技術力では監視しようにも人が要るだからだ。
そんな中、村にぽつんと立っている少女の家。
黄緑色の外装に、緑色の屋根が綺麗な木造の2階建てだ。
そこの2階にある自分の部屋で、少女はあるものを書き記していた。
それは―――――「
少女は
それからしばらくして、少女は日記をつけた。
「
そのページの一番上には、メデルソ語の文字で「
何時書いたかを忘れないようにするためと思われる。
ページには、このような言葉がメデルソ語の文字で書かれていた。
「メデルソ文字」というもので、もともと他の世界で暮らしていた人間にはどういう意味なのかが分かりづらいものだ。
「回復魔法を練習していて、何か物騒な気配を感じました」
「すると、遭遇していきなり性的な嫌がらせをしようとする男がいました」
「多分、ジクルマさんが転生させたものと思われます」
「回復魔法を使ってみたら、男はすぐに死んでしまいました」
「神様とジクルマさんには大変申し訳ない事をしてしまったような気持ちで一杯です、今にも罪を裁いてほしいほどには」
その翌日―――――。
ジクルマのいる白い建物。
建物の1階は暗い青色の空間で、中心には水色の大きな魔方陣が展開される。
彼はいつも魔方陣の真ん中に立ち、杖を握っては召喚魔法を詠唱する。
だが、詠唱する前に必ずやらないといけない事がある。
「召喚する故人の魂の選択」だ。
この魂の選択のため、魔方陣の周辺には映像のようなものが広がる。
今日もまた、カナエア以外の世界で死んだ者の魂の情報がジクルマの元に集まってきた。
その中から魂を選び、魔法で召喚。
どうやって情報を集めているのかは、まだ明らかにされていない。
魂を選び、召喚魔法を唱え、故人をほとんど生前の状態で召喚するというのがカナエアでの「転生」の過程である。
「……
メデルソ語の文字で「地球・日本
死因は「高校に向かう途中、遮断機が降りた後の踏切を無理に渡ろうとした所を電車に弾かれた事による轢死」となっている。
「|ソィンキーハ・テュ・モフェレ・テン・アクネーロ《この手の馬鹿は、地球には多いのか》?」
そう言いつつ、彼はその故人を召喚するため、魔方陣の中心に立つ。
そして両手で杖を握り、召喚魔法を唱え始めた。
「
詠唱は数分に渡り行われた。
そして―――――。
ジクルマの前に、一人の男が召喚された。
「はっ!? ここは、どこだ……?」
堂見という名前だ。
ジクルマは様々な事を堂見に伝える。
「カナエアという世界の、アルチという国だ」
「異世界……? それで、お前は誰だ?」
今いる場所を伝えられた堂見は、ジクルマに名前を聞く。
「私の名はジクルマ、この世界で唯一の召喚師だ」
「お前が、俺をここに召喚させたのか?」
「この世界で、私以外に誰がいると思っている? まさか、神による
「それで……ここでどうすればいいんだ?」
「魔物を殺戮し、この世界の魔王を倒しに行け。 ここではお前は勇者だ」
ジクルマと堂見をやり取りが続く。
「分かった、魔王を倒したら地球に戻してくれるんだな?」
「当たり前だ」
「よし、今から行くぞ」
堂見はジクルマの建物から出ようとするが―――――。
「……待て」
ジクルマはそれを止める。
「どうしたんだ?」
「一つ伝えたい事がある。 お前の話している事は、全てメデルソ語に翻訳されている」
「メデルソ語?」
「アルチの公用語だ。 お前の耳に聞こえたメデルソ語も、生まれ育っていた星にて使っていた言語に翻訳される」
ジクルマは堂見に、自動翻訳の説明をした。
堂見が話した日本語はメデルソ語として翻訳され、他人が話したメデルソ語は日本語に翻訳されるというものだ。
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