カテゴライズが難しいですが、様々なオブジェがにょきにょきと生えている美術館を歩いている感覚を味わえるような逸品です。雑然、混沌としていながら妙に学があって品がある生物的アパートを歩む現時点ってだけでポイントが高いのに、これからの展開に胸を高鳴らせることが出来る20160314。
違法増築を繰り返し、先が見えないほど高くなったアパートに住んでいるのは、本当にヘンテコな住人ばかり。しかし、それが一発ネタに終わらず、ちゃんと息ずいて見えるのは、作者様の筆力故なのでしょう。絶妙な空気の虜になります。続きを楽しみにしていただきます。
間違いなく面白い。面白いのですが、いったいどういう感情を刺激されたのか分からない。語り口はむしろ淡々としていながら、常識の通用しないアパートの全てが、何か心の根っこの方にあるものを魅了し続けてくるような感覚でした。明らかにろくでもない住人たちにどうしようもなく惹かれてしまうし、露骨に不便、と言うか危険ですらあるこの集合住宅に住んでみたいと思わせられる。狐に化かされたとか魔法にかけられたとか、これはそういった気持ちなのでしょうか。非常に独特な読後感が味わえました。