オーパーツ

きょん

第1話 プロローグ

 遥か昔。人類は終わりのない戦いによって、その身を滅ぼしてしまったという。

 地上には死の灰が容赦なく降り注ぎ、命ある多くの生物が死に絶えたそうだ。


 しかし、仮にも人類は、長きに渡ってこの星の頂点に君臨した種族である。

 元来いた生物のほとんどが死滅していく中、皮肉なことに、その元凶たる人類はしぶとく生き残っていた。

 残されたわずかな生存者達は地下へと潜り、この星が再び緑豊かな生命の星となる時をじっと待ったという。


 それから数万年の時を経て、人類は復興を成し遂げる。

 既に歴史は失われており、太古の昔に何が起きたのかは永遠の謎となってしまってはいるが。


 村から街へ。街から国へ。

 まるで遠い過去の出来事をなぞるかのように、人類は再び繁栄の栄華を手に入れたのだ。


 しかしながら、ひとつだけ。

 以前の歴史とは異なる点がある。


 大森林の奥地。あるいは広大な砂漠のど真ん中。古代遺跡。金脈。湖の底。はたまた屋敷の倉庫の中。

 人々は稀に、世界中のありとあらゆる場所で「それ」を見つけた。

 この世に存在しないはずの何か。

 不思議な杖の形をしていたり、書物の形をしていたり、あるいは腕輪の形をしていたり。とにかく様々な物があった。


 一見すると、何の変哲もないガラクタに見えたかもしれない。

 事実、使い方を知らない人からすれば、それらはただのガラクタにしか成り得なかっただろう。

 しかし、ひとたび然るべき者の手に渡れば、それは人類史に多大なる影響を与えることとなった。

 ある物は地を裂き海を割り、またある物は死の砂漠を緑豊かな森へと変貌させた。

 悪意ある者の手に渡れば、強大な国家でさえ、いとも容易く滅んだ。


 太古の文明が遺した遺産。人々の夢と希望、畏怖の象徴。

 単純な価格では推し量ることのできない、先人達の英知の結晶。


 人々はそれを「偉大なる太古の大秘宝オーパーツ」と呼んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オーパーツ きょん @kyon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ