乙女のあこがれるメルヘン世界 / 盤石の世界観と透徹した筆致

ひさびさにいいなあと思った小説ですね。多くの作品の中でも一際異彩を放つ世界観、キャラクター、展開、抜け目のない伏線の回収。まちがいなく良作です。

もちろんドールという乙女の世界、男性的な作品ばかり書いたり読んだりしている私には、完全には共感できていない部分もあるかもしれません。しかし恋愛ものとしての感情の機微や、色鮮やかなドールブティックのイメージははっきり伝わってきました。かわいらしさ、美しさというのはジェンダーを超えるんだなーって思いました。

キャラクターではメルのところへ訪れる双子のユイハとユウハが好きですね。シーンで好きなのはお茶とお茶菓子。何かといってはその描写が挟まれるのですが、これが読者の想像力をかきたてる程よいアクセントになっており、うまいです。ラストのアレが実はアレだったなんてのもお約束ではありますけど、期待通りで良かったですね。

私は小説を読むときにカラーを重視するんですが、「他では読めない面白さ」や「読者に届く作品にこめた熱意」はまちがいなく成功しています。カラーが強い、しっかりした世界観と一貫性のある筆致に支えられた作品です。

好きで好きで仕方がない。伝えたくてたまらない。それがこめられた小説です。是非、みなさんもメルの隣でこの世界を感じ、味わってほしいと思いますね。

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