舞浜駅SF


近未来、二足歩行が可能となったネズミは魔法の力を得ることにより、金銭を対価として、魔法の力による快楽を提供する、というビジネスを成功させておりました。

しかしながら、かつて日本国に存在していた暴虐ぼうぎゃくの王による日本経済への打撃により、魔法に対する対価も年々に上昇し、いつしか魔法は限られた富裕層に独占されることとなりました。


魔法によって与えられる快楽に依存しきっていた人類は、暴徒化。

ネズミから魔法を奪い取るために、千葉・舞浜に存在していたネズミの王国への襲撃を企てたのです。


それを知ったネズミは、他の動物たちに語りました。

「魔法でこの王国を隠してしまおう」

ネズミは人類との共存を望んでいましたが、それが叶わないと知り、泣く泣く、王国への唯一の玄関である舞浜駅に魔法をかけたのでした。


『舞浜駅よ。無限に自己増殖しつづけ、誰もこの世界の入口をわからないようにするのだ』


そうして、ものの数年で世界は無数の舞浜駅によって覆われ、今では月面にまで到達する勢いでございます。


「と、いうのが表向きの歴史ね」

「それで実際にはどうして世界は舞浜駅に覆われたんですか?」

「たしか、三人目の私が『ディズニーランドを独占したい』とか言い出して、JRを買い取った後、この惨状さんじょうに陥ったんだと思う」


チョコさんはあっけらかんと話します。

ちなみにチョコさんはクローン技術によって肉体を無数に保有し、意思データを記録しておくことによって、半永久的にこの世界に存在し続けることができます。

肉体が老いてきたら別の肉体に自分の意思を移し、それを繰り返すことによって老いすらも克服しています。

ちゃんと意思は連続しているので「たぶん私は三人目だから」とか言ってねたりしません。


「今日はずいぶんと話しますね、チョコさん」

「どうして? いつももっと会話しているじゃない」

「いや、でも人目につかないところ、というか。なんだか最近はオレンジさんとばかり仲良くしていたような気がするので」

「そう! だから今日は人目につくところでイチャイチャしようと思ったの。見せつけてやりましょう。私たちの子づくりを」

「それをやってしまうと全年齢対象ではなくなってしまうので」


文月くんは渋々ことわります。

ちなみに文月くんの肉体はチョコさんとは異なる技術によって半永久的に老いることも死ぬこともない肉体となっています。

二人の年齢を告げることはできませんので、あしからず。

おそらくみなさん知ることとなれば「あー、そんだけ生きてたら世界にも飽きるよねー」ってなってしまいますし、そうなると文月くんのこれからの努力に対して「別にいいんじゃない?一回くらい滅ぼそうよ」ってなってしまうと思うので。

え、一回どころではない?

ご冗談を。世界が滅びたりしたら、文月くんもチョコさんも、もっと深刻であるはずですよ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

世界で一番短いセカイ系。 二十五日 @hatsukamari

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ