中学校の時の私達は
第1話
清々しい春の風。貴方と出会って四回目の春。
貴方は、私との「最初」を覚えていますか?
貴方と初めて出会ったのは中学の入学式。
中学校で初めてだったんです。あんなに堂々と机に伏し、寝ている人を見るのは。それも、入学式の日に!
(えぇ……、あんな人いるんだぁ)
若干自分が初対面の貴方に引いていることを覚えながら自分の席は何処か、と書いてある黒板を見ました。苗字で振られているそれは。どう考えても私の席は。
(あの人の隣……!?)
二回ほど、黒板を見返しました。三回目は教卓の一番前の方がこちらを不審に見ていたのでやめました。
(……どう考えても、隣………。)
「嘘でしょ……。」
思わず声が漏れました。
「なーにがだよっ」
背中を力強く叩きながら、よく知っている声がそう言いました。
「こうちゃん、おはよう……」
立っていたのは、
そんなこうちゃんに、朝からハイテンションだね。なんてことを言うと、ない胸を張りながら
「あったりまえでしょ〜っ?だって、中学生よ、中学生!!」
ええ、やっと!!!
大声で、しかもクラスの真ん中で叫んだらそりゃあ、皆の視線の的。
私はそそくさと退場します。ここで注目されるくらいなら私は、あとでこうちゃんにラーメンでも奢ってやります。
で、結局私の席に行くことに。
変わらずそこにはヘッドフォンを着けて寝こけている男子生徒が隣に座っていて。
(私の中学校生活、無事に楽しめるかなぁ)
なんて。考えこんじゃう私がどうしてもいました。
とりあえず座って、まだある時間は読書に使おうと読みかけの小説をバックから取り出してさぁ、読もう。と本を開きー
「それ、なんの本?」
「っひゃあっ!?」
起きたらしい隣の男子が本を覗いていました。驚いて悲鳴のような声を出した私。もう既にみんなの輪の中の中心だったこうちゃんがこっちに駆け寄ってきます。
「おいおい、大丈夫かよ。
「へぇ、あおいってーの?お前の名前」
あ?
こうちゃんが怒りのこもった疑問符を男子に投げかけます。
「おめーが急に話しかけるから蒼が怖がったんだよ。」
「あぁ、そっか。そりゃ失礼。あ、俺の名前、
「次からは気ぃつけろよ?うちは皇 江っ」
……仲良くなるの早すぎじゃありませんか?あとさっきから私、置いてけぼり……。やっぱりお兄ちゃんのようにはいかないな。
さっさと、本の内容に戻ろうと目を戻したら男子ーあ、いや棗くんが
「お前は?あと、さっきの質問良かったら答えて欲しいんだけど。」
えっ?
「えっ?」
「なんだよ、えっ?て」
笑いながら棗くんがヘッドフォンをしまいます。今更ですがヘッドフォンは校則違反です。
「ほーら、あおいっ!多分コイツ悪いやつじゃないよ大丈夫」
いや、こうちゃん。親指つきだしてぐっじゃないからね!?
あっ、左指の親指に顔書いてある……。違う、そこじゃない!!
「はよ、名前」
「えっ、あの」
まだきょどってる私にこうちゃんが背中をとんっと押してくれました。
「……
「ふーん……」
俯きながらですが言えた私に棗君は私の髪をぐっと引っ張りました。
「俯くな、前見ろ!!」
「あっ、こら!」
バシーン!
響くのはこうちゃんが棗君の頭を引っ叩いた音。
突然のことで、そりゃあびっくりしたし、少し痛かったけどあぁ、なるほど。
今日は、桜がとても綺麗ですもんね。俯いてたら見れませんね、なんて。
少しだけ棗君に感謝なんてしてしまった私は変な子だと思います。
「まぁ、今でも変な子。なんだけどねー…。」
あの時のことを思い出しながら独り言をひとつ。
あの時から、私の。いや、私達の歯車は動き出した。
恋情物語 深海灯 @yukiusagi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。恋情物語の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます