「片思いの至福とでも言おうか、一瞥しただけで僕の中は彼女で溢れるのに、僕はシャッターを開けたままのカメラのように彼女だけを凝視し続ける。」
この一文が気に入りました。瞬きを忘れるほど見つめてしまう、そのような片思いの心情が伝わってきます(落ち着いてイメージすると、「〜のに、僕は」という接続に疑問符が付きますが、『すでに溢れるほど見ているのに、なおも自分は彼女を見飽きない』ということかもしれないと推測しました)。
しかし、こんなに見つめていたら、相手に気づかれてしまうどころか、周囲からも変な目でみられないかしらと「僕」を心配してしまいましたが、そこを最後に「彼女」が掬いあげてくれたのでホッとしました。みなさんも安心して読んでください。
いつか、見られていることに気づいていた「彼女」側からの小説が生まれるのなら、読んでみたいです。