(8)罰
翔子は信じられない思いだった。
「釣り人は、釣れなかった腹いせをあなたにしただけよ。人間は些細のことでも、根に持つものよ」と、偽証として裁判で争うことを勧めたが、武史は「君を疑って悪かった」と言うばかりで、裁判を拒否した。
武史は今、刑務所で刑に服している。翔子は離婚し看護師を続けている。
武史は寛子の手が離れていく瞬間の顔が忘れられなかった。全てはそこにある。命の誕生を、命というものを、いい加減に考えてきた自分は罰を受けるべき存在であると認識したのである。
武史を知るものとして、彼の何処を責めるべきや。真実は本当に武史の言う通りであったのだろうか。翔子の裁判で争へも正論である。そしてこの言葉は武史が疑ったことを許し、彼を信じ、一緒にやり直そうの意思にも取れる。
天が与えた罰なのか、武史が自ら与えた罰なのかは問わない。責められるべきは、事実に誠実に立ち向かわなかったことではないか。
罰は懲らしめでもあるし、又、再生のスタートでもある。
了
『罰を受けた男』 北風 嵐 @masaru2355
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