第21話 カクヨムがこの先生きのこるには(4)

 さて、前回カクヨムやカドカワについて述べると予告していたので、その辺について説明してみたいと思いますが、前回の小説を動画化するという話の続きで、もう一つ述べておきたいと思います。


 それは。



『小説をサウンドノベル化する』



 というお話。


 そもそも、カクヨムが後追いでweb小説サイトをやろうというのなら、小説という媒体に対して、何かしらプラスアルファの『付加価値』が必要だと思うのです。


 例えば、大成功を収めた『ニコニコ動画』も実は後追いの動画サイトでした。


 しかし、動画に対してコメントが出来て、そのコメントが動画上で表示されるという『付加価値』を加えることによって、今までに無い、まったく新しい動画サイトになりました。画面にコメントが表示されることによって、沢山の人と同じ動画を見ているような高揚感が生まれ、視聴者同士の一体感に繋がったのです。私も初めて利用した時には、凄いサイトだなと興奮したものです。


 さて、


『動画にコメントする』


 このたった一つのアイデアが、この国に新しい動画視聴のスタイルを生み出し、『莫大なお金と人』を動かすようになったのです。


 コメントを書き込むこと自体は、何も新しい技術ではありませんでした。

 チャットや掲示板などで利用され、使い古された『枯れた技術』です。


 しかし、動画の上にコメントデータを重ねるという新しいアイデアや、それが可能な程度の通信環境が整っていたことにより、枯れた技術がまったく新しいものへと、2006年末に生まれ変わったのです。


 同じように、『サウンドノベル』も20年ほど前に流行った枯れた技術です。


 私はこの枯れた技術を使って、他のweb小説サイトと差別化が図れないかなぁ、と思う訳です。所謂、『枯れた技術の水平思考』ってやつですね。


 『枯れた技術の水平思考』の意味については、説明すると長くなるのでググってください。簡単に言えば、使い古された技術であっても、時代が進めば全然違うものになるといった意味合いです。昔と比べてタッチパネルが安く調達できるようになったからスマホが普及したとか、そういう話です。


 ご存知の方も多いと思いますが、サウンドノベルとは『弟切草』や『かまいたちの夜』などにみられる、小説に音楽や映像や選択肢をプラスしたノベルゲームです。


 昔は、サウンドノベルといえばプロのクリエイターしか作ることができませんでしたが、サウンドノベル製作用ゲームである『サウンドノベルツクール』が発売されたり、PCの普及に伴ってフリーのサウンドノベル作成ソフトが出てきました。


 しかし、音声や画像などの素材が圧倒的に不足していたり、同じソフトを持っていなければ作品を閲覧できなかったりして、思うように普及しませんでした。作品を見せ合う共通の場もありませんでしたからね。


 しかし、今は違います。


 フリー素材が沢山あるので、背景や効果音は確保できるはずです。『煉獄庭園』さんなどとコラボできれば、フリーとは思えないようなハイクオリティな作品を生み出すことだって出来るでしょう。煉獄庭園さんの曲については、ネット上で沢山動画などで見かけます。多くの同人作品にも使われているので、これは煉獄の曲だったのかと思い知る方もいらっしゃるでしょう。


 では、カクヨムをサウンドノベル掲載サイトにするというのか? と問われれば。

 ええ、『あり』でしょう。

 だって、そんなサイトどこにもありませんから。


 作る楽しさや、イマジネーションを刺激できれば、面白そうだと思ったクリエイター(プロ含む)が飛びつくかもしれませんよ。そう、ニコニコ動画のように。


 作家側からすると、テキストデータとして坦々と小説を書き続けるのは、モチベーションを維持する上で大変なものです。しかし、この音楽をこのシーンに合わせるんだ! と妄想すると、作家側からすると、すこぶる捗るんですよね。


 例えば『ボーカロイド』という、それなりに専門的な技術が必要なソフトでさえ、作り手の意欲を刺激することによってここまで広く普及しました。サウンドノベルの作成は、ボーカロイドやその他音声の編集とは比較にならないくらい簡単です。


 また、先日述べたように『動画化』さえしてしまえば、自分でサウンドノベルをプレイしなくても、実況動画として楽しむことが出来ます。フリーのサウンドノベル系の実況動画をニコニコで探して見てみると、これがなかなか楽しいんですよね。




 さて……そろそろゆっくりまとめていきましょう。


 後追いの小説サイトが、既存の小説サイトに差別化を図るなら、これくらい思い切った違いを見せないと厳しいと思うんですよね。『同じ動画ならニコニコで見る』という現象が起こったように、『同じ小説ならカクヨムで読む』という現象を目指すべきだと思う訳です。作家視点から見ても、『カクヨムの方がもっと自分がやりたい表現ができる』という場にすべきだと思う訳です。


 勿論、私も株式会社KADOKAWAからスマートフォン用アプリ『ラノゲツクール』が、春を目処に発売予定であることなども把握しております。ラノゲツクールとは、空いた時間に手軽にラノベを書いて、それをサウンドノベルにして全国のユーザーと共有しようという、ちょっと面白そうなアプリです。詳細は検索してみましょう。


 そしてこのラノゲツクールは、なんとKADOKAWAが権利を持つ作品のキャラクター画像を、ある程度素材として使うことが出来るそうなんですよ。これはもう、カクヨムの特色である『二次創作作品』が捗りますね! ……ただし、このラノベツクールも、既にある小説サイト『カクヨム』との連携があるのかは不明です。(どうなんです運営さん?)


『スマホとの連携』については、私も過去のカクヨム考察で推奨しました。

『二次創作が可能であること』がカクヨム武器だとも述べました。


 その上でもし、株式会社KADOKAWAさんがラノゲツクールみたいなアプリを、ただ単体で販売するだけだというのなら……。もう何やってるのよこの会社! と叫びたくなります。


 私はドワンゴと角川が合併すると聞いた時には、角川が積み重ねてきたとんでもない数の本が、一段階上に『シフト』すると思ったんですよ。こりゃきちんとやることやれば、国内企業の時価総額ランキングに入ってくるんじゃないのか? と思うくらいに。


 例えば、固定電話からポケベルへ、ポケベルから携帯電話へ、そしてガラケーからスマホへとシフトアップする時、物凄いお金や労働力が一斉に動き出しました。このように、一つの普及した媒体が新しいイノベーションを得てシフトアップする時に、莫大な経済効果を生むものなんですよ。スマホ普及時に並に乗ったアップルなんて、今や時価総額世界一ですよ。


 国内書籍関連のシフトアップ。

 その中心にあるのが、


『カドカワ』


 のはずなんですけどね。


 一度川上さん含めた取締役に、問い詰めたい。

 アレはもうやったのか、コレは検討したのかと。

 はい。偉そうにすみません。




 さて、4連続で考察してきた『カクヨムがこの先生きのこるには』。

 まだまだ、カクヨムにはやれる事が残っている気がしますね。

 また何か思いつけば、(5)を書いていきたいと思います。


 次に考察するなら、『一人でも多くの人に小説を読んでもらうには?』についての現状まとめかなぁ。既に他の人も考察してそうな内容ですね。


 それでは機会あればまた後日。 ノシ

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カクヨム考察 ヨハラ @yohara

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