第13話

タカヒロから誘われた飲み会は銀座だった。あまり銀座は好きではない。町は好きだが、場所が遠い。西に住む人間にとって東の町はあまりにも遠い。東銀座の落ち着いたスペイン料理屋で飲み会は開催された。魚が美味しそうな店だな、と入る前に思ったけれど、入ると大量のタパスと白ワインが用意され、魚のことは忘れてしまった。30分の遅れで、すでに女性は顔が赤い。これは良いコンパなんだな、とわかる。つまらないコンパは酔いもできない。酔うには酔い空気が必要なのだ。こんにちは、と紹介し、タカヒロが簡単に僕の紹介をしてくれた後、タカヒロは女性の紹介をしてくれた。タカヒロと女性側の幹事は、共通の友人の結婚式パーティでであったそうだ。幹事は、背が低いが可愛らしい顔をした顔で、タカヒロ好みだった。もう1人はきつめの顔立ちだが美人と呼ばれる部類に入るだろう。何より笑った時のえくぼが可愛かった。タカヒロの会話を聞いていると上手に当分に話を両人に分けて振っていた。さすが商社の貫禄だ。今までいった海外旅行の話でこんなに盛り上がれるのはまれだろう。きつめの顔立ちの女性はマリコと言った。外資系化粧品の会社でマーケターとして働いている。年齢はおそらく20代後半だろう。赤いネイルが、きつめの顔とあって、冷たい印象を与えていたけれど、えくぼがその冷たさを中和し、マリコの顔のえくぼをみているだけで幸せな気分になった。


週末ということもあり、2件目の店は混んでいた。しかし飲み会の2件目はこれくらい騒がしい方がいい。デートでは落ち着いた雰囲気が重要だが、飲み会では、馬鹿な話をするくらいだから、BGMとして猥雑な会話がちょうど心地よい。


「タカはすぐに寝ちゃうの」とマリコがえくぼを添えながら言う。幹事のタカが、笑いながら「そんなことないわよ」と返す。2人ともかなりお酒が入っているのだろう。下ネタにも何も躊躇なく会話を重ねる。村上春樹か誰かの小説で「誰とでも寝ちゃう女の子」のエピソードがだったな。どんな話だったかな、と思いながら、タカの男性遍歴を聞く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

東京ラブストーリー2016 @mouneruno

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ