バグ
ドギガ
第1話 未来
未来は迫っていた。
でも想像と少しばかり違っていた。
街中のスーパーからある会社に電話が。
「…何!?またか!?」
電話を受けて頭を抱えて現場に向かうのは技術者の“一宮明(イチノミヤアキラ)”。紺の制服を着て電話を受けて頭を抱えて機材を持っていく。
「…明!?またか?」
「ああ…どうにもこのプログラムはうまくいかないな…!」
「しょうがないだろう?行くか!」
同僚の髪の長い、“紅林(クレバヤシ)”と一緒に車に乗って連絡を受けたスーパーへ。
大型のスーパーに二人が到着する。二人が向かったのは一つのレジだ。
そこにいるのは一人の人間じゃない。白いボディで人間型のロボットだ。体は真っ白で清潔感があって、腹部にスキャナがある。
左右の隣では同じロボットが作業を繰り返している。
「…お客様のお買い上げ金額は…8055円になります。」
「…お待たせしました。お預かりした袋にお買い上げの品を入れました。お気をつけてお帰りください。本日の天候は晴れですが油断しないように。」
なんとも滑らかな声でお客様に対応している。
今このスーパーのレジに人間は居ない。全ての要望に対応できるロボットが仕事している。
だが…明の目の前にあるロボットは明を見ると一言。
「…お客様…お待ちください…9番お願いします。
…お客様…お待ちください…9番お願いします。
…お客様…お待ちください…9番お願いします。…」
明はため息をこぼして背中を強引にこじ開ける。すると黙って下を向いた。
「…明…どうなっている?…さあな…このプログラムは…犯罪者が来たときの対応だが…どうして…こうなったか?」
「…またか…。」
「…しょうがないな…こいつは…処分して。別を導入するか…。」
俺達はこのロボットの変わりに別のロボットを置いて対応することになった。
俺達は会社に帰るとこのロボットを廃棄用のプレスへ。
流れるのはこの白いレジロボットだけじゃない。他にも人型を中心に色んなロボットが流れていく。この会社は多くのロボットを製作しているのだ。
技術が発展した未来。
そのために単純な仕事はもうロボットがしている。
今回のレジ打ちに、会計や会社の記録取り、警備に簡易散発…。
ロボットが仕事をする時代がもう来ている。
こうして20年もしたら人間が働かない…。そんな未来が…くると思っていたが…。
案外足踏みをすることになった。
「…昔は…こういことも多かったって聞くけどな…。」
紅林は今回のロボットの基盤とデータを見ながら髪をいじって呟く。
「…所詮、基盤やデータは人間が作っているわけだし…応用は利かないんだよ。」
俺は応えた。
この未来で訪れた意外な足踏みの原因は“バグ”だ。
今回のロボットも原因不明のバグ。昔はゲームや都市伝説でよく言われていたが。
複雑な動きが出来るようになっても所詮機械ロボットは0と1の信号の組合せで動いている。その電気信号が狂わないからどんな過酷な状況でも正しい判断と行動をする。
しかしそれを作っているのは人間であるからそのプログラムにミスがあればバグが発生し予期しない動きをする。そうじゃなくても電気信号を送る配線や電波が混線したり、思いも寄らないものを受信した瞬間、信じられない動きをする。
こういったバグは複雑になればなるほど発生するものだった。
「…人類は…機械の発展でいずれAIの発展に負けると思っていたけど…それはSFの世界だったみたいだな。」
「ああ…本当は未だに人間の手で試行錯誤しながらバグを修正している。」
「機械は…信号なら異常を察知できるけど…それが狂ったら全部狂うから、完全機械化が未だに出来ない。」
「正確にはしたろ?結局だめだったけど。」
「はははっ。」
俺達は笑いながらそんな話をしていた。
バグ ドギガ @dogiga
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。バグの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます