短い文字で、言葉で切り取られる日々の一面。その鋭くも芳醇なこと。何気ない、それゆえ誰もに訪れているだろう時間に、ふと何かを発見するまなざしは、まさに詩人のそれ。 二駅目、四駅目劈頭の二首が心に残る。
切り取る景色は窓の眺めそんな小気味良い言葉たちは、彼女の世界の片鱗なのでは、と。私は思います。ゆらり、と。彼女の世界を味わってほしいです。
何気なくああ同じだ、と呟けば届く共鳴、痛む心音通うための列車。繰り返し、同じような調子で、でも毎日少しずつ違う自分と同じように毎日少しずつ違う誰かを乗せてたんたんと走り続ける通勤電車。斜芭萌葱さんは言の葉の魔術師です。三十一文字の歌の中に違和感なく収められた光景や心象はありふれた通勤通学の車内にそっと嵌まって、そしてそっと切り取られていきます。同じようで違う毎日、ふと立ち止まることを赦してくれるような、そんな静かで身近な歌集です。