平和と思っていた次の瞬間に絶望はやってくる。自分には関係ないと思っている人の隣に絶望は控えている。絶望に陥った時こそ人の本質が見えてくる。だからこそ読むべき話と言える。ただの暗い話で終わらない、日向日影の真骨頂。特とご覧あれ。
テレビやネットや新聞で見るニュースの片隅にこの物語へと繋がる事実の断片がありはしないかと、ある種の恐怖を持って見てしまうことがあります。人間が生きていること、人間が生きていくために必要なこととして生じたはずの社会が今、人間が生きていける仕組みではなくなってきていること。それをこの身で薄々、あるいはひしひしと感じているからなのでしょうか。いつかフィクションが現実になったとき、せめてそれがかつてフィクションであったことを忘れないためにこの作品が残り続けていくことを願います。
当たり前に過ごしているこの世界の地面には、踏み抜いてしまったら最後、もう二度と戻れなくなる罅が、あちこちに入っているようです。それを描き出し突きつける作品たちです。罅を割ってしまった人々の物語、と思っていたら、それは案外自分のことだったり、するのかもしれません。だから事前の印象なしの真っ白な状態で、読んでいただきたいのです。