捜査
「これはまた酷い有様ですね。抗争ですか?」
若い背広を着たいかにも見習いといった青年は、顔に深い皺と煙草の匂いの染みついた灰色の短髪をオールバックにした男に尋ねる。
「そうだとしても薬莢の数と穴の数が合わない」
「兆弾……のようでもないですしね」
「それに」
「それに?」
「穴が深すぎるんだよ」
池袋にあるとあるビルの7階の壁は焼け焦げ、窓ガラスはすべて割れていた。焼け跡の他にこのビルの目立つ特徴といえば壁に無数の穴が開いており、その穴のどれもが深く、じっとその穴を見るものに何か脳を瘴気で支配されるかのような奇妙な感覚を抱かせるのだった。
黄色のテープで立ち入りが禁止された建物の中では爆発事故の捜査が進められていた。表向きの報道では暴力団員の二名の死亡とガス爆発ということになっている。しかし捜査担当者の誰もが奇妙な違和感を拭えないでいた。ピンク色のキラキラとしたラメが部屋中に散らばっている。
「これは?」
「どうやらカメラのようですね」
「よく分かったな。俺には黒こげのパンにしか見えない」
「いやあそれほどでも」
若い男は頭をうれしそうにかきながら目を細める。すると
――ジジッ……ジッ
と焼けたカメラから異音がして途切れ途切れの映像が液晶に流れ出した。
それを見ていた老齢の男は息をのんで相方に声をかける。
「おい、見ろ」
「誰もいじってないですよね。故障かな……怖いなあ。……コスプレ女?」
カメラの液晶画面には笑顔の少女の姿があった。
ヤクギメウルトラハッピー 辻憂(つじうい) @tujiui
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