第4話 -pee lady-

 攻撃魔法が使えるようになった。よーし、俺の時代始まってきたな。そうと分かれば早速冒険者ギルドに行くしかない。日も服も改めて早速冒険者ギルドの建物に到着である。雰囲気はあれだよ、西部劇の町から拳銃を抜いて魔法と剣を足した感じ。俺の恰好はカウボーイコスプレの女の子から拳銃のエアガンを引いて、短剣とアイテムポーチを足した感じだ。鞭代わりの縄、首にスカーフもあるよ。更に冒険者って事で足に鉄の入った革靴というかレギンス、腰に革のスカートぽい鎧、胴を守るのも革鎧、でも女性用に軽量して薄く、フォルムはビスチェっぽい。


 両開きの扉の片方ををそっと押し開ける。今は大体朝の九時くらいだろうか、この街は日が昇るとすぐ動き出す。だからか朝の出勤アワーは過ぎて久しい感じで人は疎らだ。それでも色んな人がいるね。大剣を背負ったムキムキのおっさん、革と板金を組み合わせた鎧に手斧と剣を持ったおっさん、ハンマーを持ってる全身鎧のチビ髭ドワーフ、おっさん?髭を剃ったら若いイケメンかもしれないが…。デッカイ熊獣人で手甲を付けた…くま、これもう二足歩行してる熊だ。女っぽい人は冒険者にはいない。いや、ムッキムキのアマゾネスさんが一人いたわ。今は俺以外にエルフ居ないみたいだな。そんな感じでファンタジーな戦士達がうろうろしたり、掲示板を見たり、受付で何かしてたり、あるいは端っこのテーブルで飲み物片手に何やら話し合ってる。俺が入って来た時に一瞥送ってきてすぐに興味を無くしている。まずは受付嬢の所へ行こう。


「…次の方どうぞ」


「はい、冒険者登録しにきました」


「あ、ユーキちゃんですね。また性処理係になりに来たんですか?」


 この人20歳前後で茶髪の美人さんだけど、口悪いなぁ。前に俺をあしらう時に俺の呼び名を『ユーキちゃん』で固定していびってくるし…。


「違います。攻撃魔法が使えるようになったので…」


「攻撃魔法が使える生処理係ですか?」


「まだ冒険者登録しない方がよかったりします?」


「いえ、冒険者登録したからどうという事は無いですが、下心丸出しのパーティーへの勧誘が日夜付き纏いますよ。ユーキちゃん、あそこのバーのおしっ娘姫ですよね?」


「はい?なんて言いました?」


「おしっこひめ、ですよ。おしっこをさも美味しい飲み物として客に飲ませる水商売の女はそう呼ばれるんですよ。ダンジョンに出張営業する為に冒険者してる様にしか見えませんよ。性処理込みで」


「俺、ゴブリンやスライムを魔法と剣で倒して、素材を売ったり、討伐報酬を貰ったりして、段々強くなっていて、ドラゴンとか一撃で倒せるようになったりしたい…かなって」


「田舎から出てきた三女とか、冒険に憧れる女の子とか、皆そういう事言うんですよ。で、一人でダンジョンに行って、あるいは魔物の討伐に行ってもう帰ってきません。パーティーに勧誘された場合は、安宿かダンジョンで妊娠して帰ってきます。そのまま言いなりにされて性奴隷ですね。娼婦になった方が遥かにマシです」


(なじり方が前回と変わってねぇ!)


「娼館からめっちゃ苦情来てるんですよ。無料で女を配るんじゃない、うちの商売あがったりだよ、こっちに誘導しろって。もうあれですよ、男三人、新人の女の子一人のパーティーがダンジョンに行くとかまたかって話ですよ。まずは俺たちがサポートするからゴブリンを倒してみよう、とか。俺たちが面倒見てやるから心配するな、とか言って出てくんですよ。冒険者どうしの問題、それも事件も起きて無い事なんてギルドは口出ししないですからそのまま見送るんですよ。で、女の子がイカ臭くなって泣きながら戻ってくるんですよ。あ、目が死んでる娘もいますね。そのうちお腹がポッコリしてもうここに来なくなるんですよ。どこ行ったんでしょうねぇ」


(前回よりすごい!)


「ここは冒険者ギルドなんですよ。みなさんには魔物を倒し、暴漢から市民を守り、脅威から街を守り、力ある者として尊敬される立派な人になって欲しいんです。なのに、最近、偶然会った昔なじみの友達が言ったんです、冒険者は暴行事件を起こす碌でもない連中だとか、知り合いで冒険者になった女の子が暴行されて捨てられたとか、それで、私は今何してるの?って聞かれたんですよ。そこで受付嬢って答えたんです。ええ、恥ずかしくて冒険者ギルドの受付嬢って言えませんでしたよ」


(っべーわ、口を挟めねーわ)


「いえ、そういう事にならなければ別にいいんですよ。で、女以外敵だらけの、一度失敗したら人生終了のこの職業を、あえて、やってみたいと仰る訳ですね?」


「えと、…」


「…事態を重く見たギルド本部が、女性に対する扱いを変えるとの通達が来ています。男性冒険者が婦女暴行事件を起こし、被害者および身元の確かな関係者が訴え出て、冒険者ギルドが調査し、事実と判明した場合は罰金の上ペナルティーが与えられる事になりました。この罰則が追加されて暴行事件は減少しました。この規則は女性冒険者もある程度適応されます。しかしそうなると、今度は徹底的に言いなりにするか、あるいはダンジョンや山奥などで暴行の後に殺される事件も出てきています。ここまでわかりましたか?」


「え?…やめろって話ですよね」


「いえ、真面目に聞いて欲しかったのですよ。何よりも、貴女のために。では銀貨一枚をいただきます。こちらの用紙に必要事項を記入してくださいね」


 そういって、受付嬢のエミリーさんは俺に微笑み返してくれた。やべぇ、なんかジーンてきた。

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栄誉と富をシーソーに乗せて ぽるぬるぽ @pollnullpo

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