Episode-4.5 境‐Bound:バウンド

 立花美天がこちらへ来る。

 今度は、間違いなくこちらがわに来る者として。

 椋良は目を閉じてイスにもたれ掛かり、天を仰ぐように見上げる。

「約束は果たしましたよ。後は任せてください」

 それはここにはいない誰かに向けられた言葉。

 数秒後、

 ピピピッと言う電子音が聞こえた。

 どうやら、解析が終わったようだ。立花美天に埋め込まれているナノマシン。そのナノマシンを補足し、イービルとの戦闘記録を取っている。人間が変異し出現した悪魔型ディアヴォルタイプイービルとの戦闘を行ったのはジェネクス――姫野麻里亜。 そこまでは、立花美天のナノマシン経由で伝わった映像で分かった。

 だが突然、反応が途絶。補足からはずれたのだ。

 椋良は戦闘中にそれが起きた時間まで解析をさかのぼっていたのだ。そしてその解析が今終わった。

「異空間の構築と移動か。すごいな……」

 仕組みとしては自分たちがいる周囲を効果範囲として、上空に空間の穴をあけてそのなかから別位相空間を引き出して自分たちを包み込むと言うもののようだ。

 それだけならば、捕捉するのも容易だっただろう。

 だが、姫野麻里亜が引き出した別位相空間は、どの位相座標にも存在していない。つまり、無から有を作り出してそれを空間として形成して見せたようだ。

 もちろん、その空間は不安定。だからこそ、解除されたときイービルの体の欠片もあの空間ごと消滅していったのだ。

「見つけた」

 椋良は喜びに小さな笑みを浮かべてモニターに異次元の空間で立花美天が見たであろうイービルと姫野麻里亜の戦闘の風景を出した。

 淡い光に満ちた空間。

 その手に持つ巨大な槍で麻里亜はイービルへと挑みかかっていた。

「なるほど。ここなら周囲への被害を考える必要も無いってことか」

 どうやら麻里亜は、ジェネクスのリミッターを外したらしい。

 イービルの欠片も消滅するように、その周囲へのダメージも消滅する。

 名付けるならば――


「有と無の境の領域……バウンドエリアか」

 椋良はその空間を名付けた。


                    Going to NEXT EPISODE――

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ライブギア・ジェネクス 嵩宮 シド @Takamiya_Horuru

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