王女と道化師

道化師の恋は、いつだって報われない。

でも。

それでも、恋をせずには、いられなかった。

あの人を、愛さずにはいられなかった。




彼女は、王女。

国の為に生まれ、国の為に生きる。

自分の為でなく、国の為に。

民の為に。


『統べる』とは、そういうことだから。



誇り高き、姫君。

孤高の存在。




道化師は、彼女の所有物。

モノであって、人ではない。


決して、同じ場所では生きられない、存在。

同じ空間に存在するけれど。

生きる世界が、違うから。



一途な想い。

ただ、彼女の為だけに。

彼女の傍らで、彼女の為だけに道化る。

道化師にとって、それは至上の幸福なのだ。


ただ、ほんの一時でも、王女の心が安らぐのであれば。

それで良いのだと。

生涯を、それだけの為に捧げられること。

それが自分の、愛の在り方なのだと。

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散文 はむちゅ @hamuchu

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