第20話 サボりたくてもサボれない……
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結局、昨日は班しか決まらず解散となった。生徒会のメンバーも手を焼いていたようだ。
騒ぐのはいいけど、時と場所を考えろってんだ。
今日は班ごとに作業をする。俺と茜は生徒会のサポートをしていた。
「
「は、はい!」
生徒会長はテキパキと仕事をこなす。茜はその横で
「えっと……そこの君、これを元に資料を作ってもらっていいですか?」
何で俺だけ名前が無いんだろう……まぁいい。頼まれた以上はしっかりやるか。
俺は会議室に置いてあるパソコンを立ち上げて、資料を作る。これをゆっくり作ってサボろう。
俺がカタカタとキーボードを打っていると、会議室の一角からゲラゲラと笑いが出る。
作業もしないで騒いでるのは、昨日も騒いで生徒会長に注意された奴らだ。中心には苧環おだまきがいる。
仕事しろ、仕事。口じゃなくて頭と手を動かせ。
あいつらのせいで、他の班も手が止まりがちのようだ。仕事をしているのは生徒会ぐらいか……。
あいつらが騒ぐのはいいが、そのせいで俺の仕事が増えるのはごめんだ。生徒会長は注意するだけ無駄と思ったのか、黙々と作業をこなしている。
俺はパソコンに打ち込んだものを一枚だけ印刷して生徒会長に見せに行く。
「生徒会長、これでいいですか?」
彼女は素早く目を通す。
「うん、上出来です。ではこれを人数分印刷してください」
「うっす」
俺がコピー機へ向かうと、機械ではなく茜がウンウン唸うなっていた。
「何やってんの?」
「あ、陽介。これ動かなくなっちゃったの。叩けば直るかな?」
「昔のテレビじゃないんだから……」
直し方が雑すぎるだろ。余計に壊れる未来しか見えない。
「とうっ」
「人の話を聞け!!」
問答無用とばかりに茜が勢いよくチョップした。するとコピー機が変な音を立てながらも動き出す。
「へへーん、どんなもんだい」
ここで褒めると調子に乗るので適当にあしらう。
「はい、すごいすごい」
頬を膨らませている茜を横目に、俺は頼まれた仕事をこなす。
「何か雰囲気良くないよね」
茜がポソッと言う。
「あぁ、騒ぐなら
俺と茜はそろってため息をついた。
バンッと長机を生徒会長が叩く。
「仕事をしないなら、ここから出ていってください。騒ぎたいならここ以外にも場所があるだろう」
そうとうご立腹のようだ。……ていうか口調変わってるし。
部屋はシンと静まり、誰もが生徒会長を見る。
「はっきり言って、邪魔だ」
す、すげぇ。そこまで言うのか。反感を買わなければいいが……。
「え~、生徒会長、それはないでしょう」
案の定、グループの中の男子が反抗する。
「やっぱ、何事も楽しくやんなきゃ。青春、楽しまなきゃ損でしょ」
俺はその言葉に静かな怒りを覚えた。
「それに、俺ら以外にも騒いでる奴もいるよな? 何で俺らだけなの?」
ずいぶん強気だな……。て言うか、自分たちが騒いでるって認めちゃったよ。
「君たちが一番うるさかったからだ。自覚が無いとは言わせないぞ」
生徒会長も強気だよ……。口角を上げて好戦的に笑う。
「チッ、つまんねーの。俺は帰るわ」
そう言うと、そのグループはどやどやと帰っていった。会長は静かに息を吐く。
「……今日はここまでにします。お疲れ様でした」
会長が会議室に残っている生徒にそう言うと、めいめい席を発ち帰っていく。
「そんじゃ、俺も失礼します」
そう言って俺は会議室を出る。茜もついてきた。
外は既に暗くなっており、廊下の窓から三日月が見えた。
何てこったい……。何でこんなに少ないんだ……。
俺は会議室に入って
昨日注意された奴らが休むのは、なんとなく予想出来た。でも、他の奴らも休むのは……。会議室には昨日の半分ほどしかいなかった。
「まったく、困りました……」
俺が入り口で固まっているのを見て、生徒会長が近づいて話しかけてくる。
「ここまでモチベーションが低いとは……正直、想定外です」
頭痛がするのか、こめかみを押さえながらそう言った。
「大丈夫なんですか?」
茜が俺の後ろから問う。
「大丈夫……とは言えないですね。少なくとも、進捗が遅れているのは
この人は怒ったりすると口調が変わるのだろうか……。今後の観察対象になりそうだな。
俺は今、撮影機材の確認をしている。俺って撮影班だったっけ?
この学校は私立だからか、外部への宣伝が活発だ。だから学校行事にも力をいれている。
ビデオカメラのバッテリーを確認して、テストも兼ねて電源を入れた。
うん、大丈夫そうだな。次は一眼レフか……試しに何か撮ってみるか。
どうせだし、茜に被写体になってもらおう。
「茜、ちょっと手伝ってくれ」
「どったのー?」
俺はファインダーを覗いて、きょとんとした顔の茜をパシャリ。
「な、なに撮ってんのよ」
「テストだよテスト。テキトーにポーズ取ってくれ」
そう言われると、茜はピース。それをパシャリ。
なぜか笑顔で敬礼。パシャリ。
ウインクでパシャリ。
いやー可愛いですな。大きな目、長い
茜も楽しくなって来たのか、ポーズが大胆になってくる。
腰に手を当ててキメ顔。パシャリ。
上半身をかがめて、上目使い。パシャリ。
顔だけ振り向いて流し目。パシャリ。
何か俺も変な気分になってきた。
「いいねー。次はスカートを少し持ち上げてみようか」
何言ってんだ、俺……。
茜は特にためらう様子もなく、スカートの端を両手でつまんで少しずつ持ち上げていく。
羞恥心からか頬が染まり目が
徐々にあらわになる白磁のような太もも。黒のニーハイとのコントラストが素晴らしく目に毒だ。
下着が見えそうで見えない絶妙な位置で茜の手が止まる。
もういいよね? と確認するかのように、こちらを見た。
俺は一写入魂の思いでシャッターを切る。もしかしたら、俺の魂が写っているかもしれない。
「よ、陽介。も、もういいよね?」
今さら恥ずかしくなったのか、茜はそう言って仕事に戻った。
俺は今撮った写真を確認する。……鼻血出そう。
これ売れるんじゃない? 俺が一攫千金を夢見ていると生徒会長が声をかけてきた。
「ずいぶん楽しそうだったじゃないか」
笑っているはずなのに、声の温度が低い。口調も変わってる。
「い、いや、カメラのテストを……」
「そうか、それはすまなかった。では次の仕事をしてくれ」
有無を言わせぬ口調で告げられる。夏なのに背中が寒いよぅ……。
「ふぅ、では今日はここまでにします。明日も頼みますね」
生徒会長がそう言うと、会議室の空気が一気に
俺はんんっと伸びをして帰りの
「あ、茜。俺は千代さんの所に寄ってくけど、お前はどうする?」
家が隣だから一緒に帰るのは必然だが、俺は用があるので茜に聞く。
「あ、私も行くー」
うん、それがいいだろう。さすがに暗い中一人で帰らせるのは気が引けるし。
「お疲れ様でした」
俺と茜はそう挨拶して会議室を出る。今日は
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