第3話

そして、やってきた王様の誕生日。




国中から、たくさんの贈り物が届き、立派なテーブルにはごちそうが並んでいます。




でも、王様にとって1番のお楽しみは、特別なごちそうの、あの、かわいそうなウサギです。




「特別なごちそうをここへ!」




王様のお供の者が言うと、ラッパが鳴り響き、銀のお盆に乗せられた、かわいそうなウサギが運ばれてきました




かわいそうなウサギは、真っ白フワフワ、コロコロして健康的な体には緑の繻子のリボンをつけられ、




目をキラキラと輝かせています。




「おお、見違えたぞ。最高の贈り物らしくなっているぞ。」




王様が言うと、かわいそうなウサギは、その小さな口を開きました。




「誕生日おめでとうございます、王様。 そして、ありがとうございます。」




「ん?なんでありがとうなんだ?」




王様が聞くと、かわいそうなウサギは目を輝かせて言いました。


私は、王様に連れてこられるまで、自分の国がこんなに美しいということを知りませんでした。




まず、それがひとつめのありがとうです。




そして、初めていい香りのするお風呂に入りました。自分がこんなに白くてきれいだったなんて知りませんでした




これがふたつめのありがとうです。




あんなに美味しいごちそうを、お腹いっぱい食べたのも初めてです。これがみっつめのありがとう。




そして、こんなにきれいなリボンをつけて着飾ったのも初めてです。ありがとうございます。」




「・・・・・・・・・・・」




王様はびっくりしてしまいました。




今、自分が食べるごちそうからお礼を言われたことなんて、なかったのですから。




そして、今まで自分が当たり前のようにしてきたことに、こんなに感謝しているウサギをみて、




胸の奥にある今までの心が、ゆで卵の殻のようにひび割れて、




胸いっぱいに光がさしたような、温かい湯で満たされたような、そんな気持ちになりました。






「よし・・・食べるぞ!」




王様がいいました。




「はい」




かわいそうなウサギが一歩前に出ました。






「お前も食べるんだ。」




「えっ?」




かわいそうなウサギは耳を動かして王様のほうをみました。




「お前も一緒にごちそうを食べるんだ。」




王様はそう言うと、テーブルに並んだごちそうを食べ始めました。




その日の王様の誕生会は、夜がふけて、お月さまがあくびするまで続きました。




僕たちのいるところから、1番近くて、1番遠いところに




おおかみの王様と、幸せなウサギの住むお城がありました。






すばる



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かわいそうなウサギ すばる @subarudream

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