log11:エピローグ

トラックで私は荒野を延々と走っていた。

見渡す限りの砂と砂利と、少しばかりの木々と草が生えているだけの、延々と続く風景。

空は青く晴れ晴れとしている。雲ひとつ無い晴天だ。

数日もすれば飽きる風景かと思っていたが、中々これがどうして飽きないものだ。風景を見ながらの運転は何もにも代えがたいほど楽しい。

助手席には西洋人形――ではなく、ゴシックロリータの服装に身を包んだアンドロイドがちょこんと座っている。結局、スカーレットはついてきたのだ。


「ひとりじゃ寂しいだろうと思ってね」

「…本当は、君がひとりで残されるのが寂しいからだろう?」

「馬鹿!」


顔を真っ赤にして私をボカボカ殴りつけるスカーレット。いくら体を強化したとはいえ、彼女に殴られると結構痛い。


「運転の邪魔になるから辞めろ!やめてくれ!悪かったよ!」

「もう!」


頬をふくらませていじける。私に居たのは息子だったが、もし娘が居たらこんな感じだったのだろうか。

次にもし子供をもうける機会があれば、娘でも良いかもしれない…。


「?見てトーマス。誰か倒れているわ」


遠くに見える、壊れかけたシェルターの付近に人が倒れているのを見つけた。

…見た所、14歳くらいの女の子だろうか?

この辺りに住んでいた人々とは人種が違うようだ。この顔立ちは東洋系の顔だな。

脈拍と呼吸を確認すると、まだ生きている。唇がカサカサになっていることから水分が足りない事を見受け、私はタオルに水を含ませて少しずつ彼女に水を飲ませた。


「…。ゲホッ!ゲホッ!」


少しずつ水を補給し、喋る事が出来るまでになんとか回復したようだ。


「…あなたは?」

「私はトーマス。トーマス=J=リバー。リバーサイドヒル・シェルターの生き残りだよ。君は?」

「私は…メグミ。メグミ=オオサワです」

「どうやって今まで生き延びてきた?」

「話せば長いのですが…かいつまんで言うと、こことは違う離れたシェルターでずっとコールドスリープで生き延びて、最近ようやく目覚めたんです。私が目覚めた時には、もう誰も居なかったのですが…」

「ここでは何をしていた?」

「はい。何か食料や水は無いかと探して居たのですが、何も無くて…。もう体力の限界、水も無くて死ぬんだろうなぁとぼんやり思って居たのですが…あなたが助けて下さいました。ありがとうございます…」


そう言うと、彼女の瞳から涙が零れ落ちて来た。ひとりでずっと寂しかったのだろう…。

とりあえず、今日はココで夜を明かすことにする。

何とか甘露を凌ぐ建物もあるし、ずっとトラックで寝泊まりしていたから体がちょっと痛い。


「所で、このお人形さんは…?」


メグミがそう尋ねると、スカーレットはいきなり彼女の眼前に立って答えた。


「私は人形なんかじゃないわよ!れっきとした自我を持ったアンドロイド!一緒にしないで!」

「えっ?へっ?」

「全く、不勉強な人間はこれだから困るわ!私についてじっくり教えてあげるからちょっと話を聞きなさいよ!」


まあ、人工知能自体ちょっとマイナーだから普通の人は知らんだろう…。

そしてスカーレットは、訳もわからぬメグミに自分のことを話し始めた。

…私以外の話し相手が出来て良かったな。スカーレット。




――私と、スカーレットと、メグミ。

三人での旅はこれから始まる。

世界中に未だ見ぬ生存者と出会い、話し、いつしか皆で集まってまた人々の繁栄を取り戻さなければならない。決意に似た何かを、私は胸中に得ていた。

…そして妻と子を、例え死んでいたとしてもその足取りを、少しでもいいから掴みたい。

いつか、目的を果たせれば良いな。

スカーレットとメグミの取り留めのない話を聞きながら、私は毛布の中で眠りに付いた…。



---

log11:エピローグ END



True/False Fin

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