ラノベらしい恋愛小説。
現実世界でトントン拍子に恋愛感情が深まる事は殆ど皆無。一方的に一目惚れする事はあっても、相思相愛にはならない(と断言して構わないと思う)。
それを嘘臭くならないように昇華するにはフィクションが不可欠だが、本作品は巧みだ。
最初、パラレルワールドのキーワードにSFだと思い込んで読み始めた。歳を取ると、思い込みが激しくなる。自分でも嫌になるが…。
ところが、科学的に深まらない。その内にサスペンスチックになるが、テンポが違う。まぁ、緩いんですな。「何か変だなぁ」とチェックしたら、恋愛に分類されてた。「恋愛小説ならシックリ来るわ」と納得しました。
逆説的だが、ジャンル毎に相応しいテンポが有るのね、と気付かせてくれる良い教材だと思います。
でも、私はSFと勘違いして読み始めたので、星2つです。非常に我儘な態度ですが、老人とはそう言う存在です。
18歳の誕生日、パラレルワールドへ迷い込んでしまった原田真由美は“自分自身”と対面してしまう。
しかもまわりには向こう側の自分の友だちがいて、それはもちろん見知らぬ人たちで……
という状況から始まるこの物語、主人公の真由美さんが見も知らぬ世界で見も知らぬ人と心を通わせていく王道のストーリーラインなんですが。
それをなんでもない風に、それでいて滋味深く味つけしてくれる個性的なキャラクターたち。そして各エピソードを支えるドラマの数々。
真由美さんのやわらかな一人称と相まって、気がつけば一気に読み進めさせられちゃうわけです。
そして読み終わった直後、ふとタイトルを顧みて気づかされる「このタイトルはそういうことか」のカタルシスですよ!
王道でここまで綺麗に「著者ならではの筆と味」を醸し出されたらもう、読む側としては転がるしかありません。
穏やかながら山あり谷ありオチもあり。恋愛ものが苦手な人にもお勧めできる一作です。
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)
じっくり読みまして。タイトルの意味が読了と同時にわかりました。
メインストリームがタイムトリップなのか、ラブコネクションなのかを探りながら、キャラの琴線に触れていき
さまざまな成長を経て現実とリンクする。不思議な存在は存在でちゃんと用意されていて、でも主人公の最後の哀しみがやってくる。
しかしその後は.....
自分の人生もまた素晴らしい物語。出会いと別れの地図の上、誰もの人生を讃えた物語に★をしっかり贈ります。
また時折のラブコメテイストな文字遊びも大変楽しく読めました。
こういうふんわりしたラブストーリーも味わい深くて良いですよ。
どうでしょうか?
良いなと思うところはたくさんありますが、特に終盤の絶望的な出来事に関連して、とても感銘を受けました。
変えられない運命もある。
けれど、ほんの少し歯車を組み替えるだけで、その絶望的な出来事自体は変わらなくても、確かに変わるものがある。
整理できなかった気持ちを整理して、しなくてはいけなかったことをできるようにする。
辛い出来事をそうやって乗り越えていこうとする強さが、作品から感じられて、とてもいいなと思いました。
また、しっかりとプロットに合わせて組み立てられた設定も見事でした。
終盤の展開に違和感を生じさせないように、うまく組み立てられていて、さらに、それを会話の中できちんと披露されていました。
長くとも文章が読みやすくてストレスにならないので、十万字越という分量も感じさせません。
言葉に関しても、私では自然に使うことが出来ないだろうなと思うものが、とてもさり気なく織り込まれていて、語彙の豊富さを感じました。