3
さびれた、消えそうな海辺の駅が、終着点だった。
わたしの他にだれも乗っていなかった鈍行列車を下りる。無人駅だ……もうわたしをひきとめるものもなく、そもそも切符だってなかった、あるのは……
空はどんより曇り空。海へ出てみる。ゴミや魚の死骸の絶え間なく打ち寄せられた、汚い浜だ。いつか見たことがある……河口をはさんで向うの岸では、点ほどにしか見えないが、漁師と思しきすがたが何かの網を引きあげている。
砂浜に下りる気にもならずに、堤防沿いを歩いてみた。
遠くを、船が通っていくようだ。
こんなところが、世界の果て、案外、そうなのかもしれない。……
――臨海遊園地 建設予定地(着工未定)――
廃屋になった海の家を見つけ、そこに入る。ガラクタ達と一緒に、テーブルの下でまるくなっている、一羽だけの、とべない鳥。……むしろ、帰ってきたのかもしれなかった。
夏はとっくにおわって、あるのはさむい風だった。
*
前の砂浜を、年老いた漁師ふうの男が通りがかる。
「あんたも、天使の噂を聞いてきたかね? こんな辺鄙なとこまで。
……
昔、この近海でたくさんの天使がつかまり、殺された。今でも沖へ出ると、もやもやした天使達のまぼろしが見られる。亡霊だとも、その折の生き残りだとも言われとる。……」
漁師は、盲いのようだった。わたしは、ポケットの紙きれを、漁師に手渡す。
「行くかね?! ボートを出してあげよう。……ほうこれは。……遊園地なら、もっと海の向こうの向こうに、今は沈んでおるだろうな。…… ……
遊園地へ……
(初出「ユリイカ」2009.1月号)
幻想童話集 k_i @imayui
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