双子の王子
昔々ある国の王様と御妃様に、双子の王子様が生まれました。黒い王子様と白い王子様でした。
彼等は王様と御妃様の温かい愛やお城の皆に見守られ、健やかに育っていきました。
彼等はいつも一緒でした。
朝起きる時も、食事の時も、勉強の時も、遊ぶ時も、ずっと傍にいました。
彼等が青年になったある日、彼等は隣国の王女様に恋をしました。
白い王子様は言いました。
「兄さん。貴方は王位を継ぐ御方だ、だからせめて彼女は諦めてくれないだろうか?」
黒い王子様は言いました。
「弟よ。彼女を伴侶と出来たなら、私は王位などいらない。冠はお前に譲ろう」
そんな二人の様子を見て、王様と御妃様は困り果ててしまいました。
どんなに美しく聡明なお姫様を何人連れて来ても、彼等は一向に首を縦に振ろうとはしませんでした。
彼等が焦がれ、愛しているのは隣国の王女様ただ一人でした。
そして――隣国の王女様が選んだのは、黒い王子様でした。
白い王子様は言いました。
「兄さん、どうぞ御幸せに」
黒い王子様は言いました。
「私はこの国を去り、彼女の国に行くつもりだ。
お前は、この国の王になれ」
黒い王子様はこの国を去り、隣国で王女様と結婚しました。
翌年には男の子が、その翌年には男女の双子に恵まれ、女王様になった王女様と国を治め、幸せに暮らしました。
白い王子様はこの国で王様になり、国を発展に導き、優しい王様として国民にとても慕われました。
しかし、生涯誰とも結婚しませんでした。
白い王子様は隣国のお姫様を思い続けたのです。
そして偶然にも、彼等は春の暖かい日の同じ時間に、この世を去りました。
SS集 砂原 @tourniquet15
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