外伝〜優太幼少期⑥〜

 そして、しばらく走ったあと、僕は山に入りました。山の少し森のなかに入ったところでテントを取り出しました。当然のごとく展開されるので、取り出すだけでいいのです。楽でいいのです。


「さて、お弁当入ってたりは〜……しないよね〜」


 リュックの中をあさってみるが、昼みたいに弁当が入っていたりはしません。

 僕はプレーン味のカ○リーメイトを取り出して齧……あれ?

 もう一度リュックの中を確認する。

 中にはカ○リーメイトのプレーンとチョコの二種類が入っていました。


「……? あれー?」


 どこにもおかしい所はない。僕は得体の知れない違和感を感じていたけれど、頭を振って忘れることにした。


 ムグムグムグ……



「ごちそうさまでした」


 お腹も膨れ、味にも飽きてきたので、僕は食べるのをやめました。

 テントに内蔵されている……やっぱりおかしいです……寝袋に入り、僕は眠りにつきました。


──お疲れ。明日は休みじゃないからな。今回はこれで終わりだ。


 夢の中でそんなお父さんの声が聞こえたような気がしました。




「ほら〜優太〜! いい加減起きなさ〜い!」


 そして翌日。僕は自分のベッドの上で、お母さんの声で目覚めた。……あれ? 自室?


「たしか僕はテント……そういえば腕時計は?」


 僕の左腕にあったはずの腕時計。それは既になくなっていました。でも、あの感覚は夢ではありませんし、なにより日付がきちんとその分だけ経っているのです。口の中のパサパサ具合も、カ○リーメイトを食べた時と同じ感じです。


「早くしないと遅刻するわよ〜」


 またお母さんの声が聞こえたので、僕は慌てて外へと出ました。だから気が付きませんでした。椅子の上にあのリュックがあることに。



〜side out〜



〜神野秀太郎視点〜


 上の階から息子が降りてくる。流石にあの腕時計は回収させてもらったが、リュックは与えてもいいだろう。一応中に誰にも言うなって書いてある手紙は入れてある。それにしても、昨日の息子には驚かされた。本来ならあそこまで到達はできないはずなんだがな……。まあ、俺の息子だからな。と、降りてきたか。


「おはよう」

「おはよー。ねえ。僕ってマラソンしてたよね?」

「おう。そうだぞ」

「誰が僕を運んだの?」

「お前の師匠だよ」


 これは真一と話し合って決めたことだ。流石に魔法の存在はまだ知らせたくは無い。だが、一瞬で運ぶには魔法が必要。ということで、もう既に優太の中でバケモンになってる真一に全て任せることにしたのだ。


「そうだ。優太、リュックには気づいたか?」

「リュック?」

「昨日のやつだ。師匠がご褒美にあれをプレゼントしてくれるってさ。その代わり、誰にも言うなだとよ」

「わかったー。今どこにあるの?」

「お前の部屋の机だ」

「わーい!」


 息子が喜ぶ姿はやっぱり可愛いなぁ……うん。眼福眼福。


「あなたも真一さんに劣らない親バカね……」


 妻のそんな声も、今の俺にとってはただの雑音だった。

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勇者ですか?いいえ。最強目指す凡人です。 ジェネシス @Genesis

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