武陽大江戸繚乱學園

彩葉屋 仙左衛門

第零幕『桜と喧嘩は武陽の華』


 季節は春。うららかな陽気に輝く桜並木を、爽やかな春風が吹き抜ける。さながら春の妖精が躍っているかのように舞い散る桜吹雪と共に、一人の男が歩いていた。


「まったく、新年度早々から忙しいことだ」


 精悍な顔にわずかな呆れをにじませるのは、身長190㎝はあろうかという長身の青年。つややかな黒髪を風が揺らすに任せ、身に纏うのは和服をベースにした制服と純白の羽織。

 彼の名は桐生貴矩きりゅうたかのり。ここ、武陽大江戸繚乱學園の甲級2年に籍を置く男子生徒である。


「というか、風つえーな……」


 何気ない彼の独り言に答えるように、一陣の風が吹き抜ける。道に積もった桜の花弁も舞い上がり、さながら桜色の風が吹いているような錯覚さえ覚えるような幻想的な光景だ。

 その中でひときわ目立つのは、やはり青年の姿。桜色の風に合わせて翻る純白の羽織の背には、『地楡に雀』の紋が金色で描かれている。

 それは彼がここ、武陽大江戸繚乱學園において最強の剣士に与えられる役職『武陽剣術指南役』に任じられていることを表していた。


 これは世界有数の猛者が集まる學園において、頂点に立つ一人の男の物語である。

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武陽大江戸繚乱學園 彩葉屋 仙左衛門 @iroha_kotodama

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