第2話
「オギャー(いでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ)」
日本へ転生と決意した瞬間、いきなり頭に激痛。
ぼやける視界。体は誰かに抱かれて持ち上げられてるかのような浮遊感。
ああ、これが死ぬって事なのか。
どうやらピンク髪の人とのやり取りは頭が生んだ妄想で、今さっき地面激突したんだろうなぁ。
「おめてとうございます。元気な男の子ですよ」
あれぇー……?
脳がやられたわりに意識がしっかりしてるような……。
けど視界はぼやけて色もはっきり区別できないし、何かこう手足も軽くバタバタと動かせるていど……。
何かさっきから体動かされてたり、どっかに置かれたりしてるような感じがするが目がはっきり見えないせいで訳がわからん。
あれか、救急車で運ばれてるのかな?
うん。きっと奇跡的に命は助かって、今痛みが無いのは脳が痛みを遮断してるとか、そんな感じなんだろう。
大丈夫助かるさ。
俺は自分の中で答えが見つかり、ホッとすると急に睡魔に襲われ意識を手放した。
「やぁ。無事に生まれて何より何より。今からこの夢を使って君へ説明メッセージを送るので、一方通行になってしまうけど、気にせず聞いて欲しい。ちなみに一方的な説明ゆえ無駄にハイテンションも作った美少女の姿もないけどね」
「さてと。本来、記憶を持ち越しての生まれ育った世界への転生は、ほとんど力を使わず希望の国へ希望の力や才を与え、好きな家庭環境を送れるのだが、君は平和を望んだわけだ。がしかし、実は無条件で日本へ最短コースで転生すると治安に少々問題が、そう実は地球では隕石落下にともない広がったウイルスのせいで地球人は肉体が変質し、男性が極端に生まれにくく、そして男性の身体能力が著しく低下し、逆に女性は身体能力があがる天変地異による世界的混乱が君が生きてた時代から約50年後起こる運命なんだ。」
「というわけで、世界が混乱が落ち着き、、平和な日本への転生という選択で力の大半を使っているのを理解してもらいたい。さらに言えば君に違和感を与えない為にも身体能力も含めて天変地異前の男性体をモデルにしている。ここまでの調整で力の大半使って、最後の力で天変地異前のような普通の家庭環境を用意した、まぁこれらの意味は後々分かる事だろう。それでは第二の人生を楽しみたまえ。」
まじかよ。
夢……にしては異様にリアルで、聞いたメッセージが頭に残る。
意識するとさっきのメッセージ脳内に再び再生される……。
マジなの?
という事は視界がぼやけてよく見えないのは赤ん坊だから?手足がバタバタ動かすのが限界なのは赤ん坊だから?
……えっ何?
何か良い匂いが、そうなんかこうミルキーで凄く食欲をそそる。
赤ん坊かどうか何て急にどうでもよくなって無意識に何かくわえ、チューチューと自然と吸い込む動作を繰り返している。
そして口内に広がる甘くて美味しい液体。
ああこれ、母親のおっぽいもらってるんだな、そうか俺本当に生まれ変わったのか。
俺は自分が本当に死んだのか転生したのかという疑問は今この瞬間晴れた。
そして俺の第二の人生が始まった。
■■■
どうも暇を持て余らしている櫻木 大地です。
今更だけどあのピンクの人は元の平和な日本の事いくら願ったからってここまでやっちゃう?
もうここまでやらなかったら、他に才能とか貰えたんじゃね。
何で転生しても櫻木って名字で大地って名前なんだよ。
あの日から三ヶ月過ぎたあたりでどんどん視界クリアして自身の赤ん坊ボディも自覚でき、声も周囲の音もどんどんクリアにはっきりと聞こえだして、そとてもう肉体に左右され食欲と睡眠欲のままに行き、受け身のまま育てられ時間はあっという間に流れました。
そう、そして現在6才です。
ちなみに幼稚園には通ってません。
というか世間のお子様は小学校に入学してるであろう年齢になっても小学校へ入学しない模様。
いやいや、あのメッセージでこの時代の男は身体能力が著しく低下しててとかなんとか言ってはいるが、じわりじわりと意味が分かってきたよ。
男は身体能力が下がりひ弱に、それならまだマシな方で中には病弱になっちゃうお子様も多いとか。
つまり男って普通に集団に揉まれて生活したら怪我したり病気のリスクが高いそうな。
まぁ天変地異前の男が基準で生まれてる俺には関係ないんだが……。
とにかく男が生まれにくいのにそんな事になってるから男児保護法なるものが存在して普通に学校に通うのは中学からで小学校の勉強は自宅学習が基本。
さらに周囲に同世代の男児は居なく、当然交流も無い。
だから友達が欲しくても作れないのである。
そして男が周囲にいないのなら、せめて同世代の女児と知り合わせて公園とかで遊ばせろよと日々思いながら特に何もしない生活してます。
だけど当然外は危険って思考だから、公園デビューなんてものはなく、同世代の女児なんて見た事は一度もない。
だから暇で暇で仕方が無い。
だって家の中ですべてが完結しててテレビもゲームもなく6年だぜ。
いいかげんこの生活には飽きてきたんだよ!
最初はさ体を自由に動かせない事にも不満を覚えてたけど。
欲望に任せて食っちゃねするだけの生活に楽しさを見いだして、簡単な自宅学習ですげぇすげぇと親に褒められて、何か気分良かったけどさ。
ずっとこの生活はあきるんだよ!。
しかも幼稚園とか小学校とか行けないでこのまま、まだまだ自宅でこもり続けると知った日からは特に思っちのうんだよ。
あーだれか家族以外知り合いたい、友達欲しい、自宅以外のどっかで過ごしたいってさ。
ほんと、ママゴトでも付き合うよ。
いいじゃん女児しかいない公園連れてってくれよ!お砂場で遊んじゃうよ俺!。
と、そこまで考える程に、とにかく暇なんだよ。家族以外と知り合いたいんだよ!
だけどこんな事親に言っても答えはノーなのだ。
何せこの世界の思考的に、外で遊んで病気が移ったら……とか、公園汚い、とにかく人が多い環境に連れ出すのは危険というのが常識化してるようで、男児に出会いなんてないのだ。
正直転生したんだなぁって実感してからは、幼稚園あたりで美少女な幼馴染みと知り合って好感度あげまくってやるぜとか考えていたがその夢も叶わず。
絵本に積み木の日々ですよ。
ああゲームしたい。テレビを自由に見たい。
そもそもこの環境って。もう男はひたすらインドア内向的になりやすくコミュ力が育ちにくい環境になってるんじゃないか。
正直この世界の男達の中学デビューはいったいどんな事になっているのか。
早く中学生になりたいっす。
「ほーら、駄目だぞ外は危険なんだ、あまり外気に触れやすい窓に近づかないでこっちで絵本でも読んでなさい」
そしてこれである。
せめてもと外の景色を見ていれば、専業主夫たる父上どのが俺を無理矢理抱きかかえて窓から離す。
そしてまぁこの父親。
線は細く小柄でいかにも弱そうで、全然父親っぽく見えないが今の時代の男とはこういうもんなんだろう。
ちなみに母親は育児休暇とか産後休暇とか子育て休暇とか色んな休暇の会わせ技で数年ちかく仕事を休んで側にいてくれたが、現在はばりばりと外に出て働いてる。
しかし俺はめげないのだ。
父親がこの世界の常識的な行動をとって俺的に異様に過保護に接してくるが……。
転生補正でこの世界の男と違って弱くは無いのだよ。
というわけで、現在俺はひそかにこっそり家を出て散歩しちゃうおう大作戦を考えているのである。
幸い我が家は二階建ての一軒屋で、父親は家事に夢中。
さっきは俺の今居る部屋の掃除にやってきたから、たまたま顔を合わせたが他の部屋を掃除している時にこっそり移動すればいけるはずなのだ。
ドキドキ、ドキドキ。
ああやべぇ、心臓がドキドキする。
たかが散歩されど散歩。
後でバレて激怒され怒られるだろうけど、もはや暇をもてあましすぎてる俺に、このまま自宅に居る選択肢はない。
転生先が平和な日本って事なんだから、6才の少年が外散歩する事ぐらい何の問題も無いはずだ。
そもそも同世代は普通に小学校に通ってるんだから。
さてと此処までは順調だ。
俺の忍び足スキルは冴え渡り、静かに移動して父の目を盗み、今玄関の前までやってきた。
―ガチャ
「いっ―」
玄関のドアノブの音がなり響く。
俺は慌てて周囲を見渡すが、父の反応は何も無い所を見ると気が付いていないようだ。
今しかねぇ。
俺は自分の靴をサンダルのようにはいて、急ぎつつこっそり外に飛び出した。
すーはー、すーはー外の空気を堪能。
「旨い!」
くっくっくっ。
思わず笑いがこみ上げて笑みがこぼれる。
俺は自由だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
思わず心の中でそう叫んだ。
さぁ楽しい♪楽しい♪お散歩だぁ♪
俺は鼻歌交じりで、家を出て左に曲がりとりあえずまっすぐスキップでかけだした。
実に心地よい。
中学ぐらいだと既に痛いとしか思われないスキップ移動だが、6歳児の少年が行うには客観的に見てほほえましい事だろう。
「んっ!?」
公園はっけーん!
いーっやっほー。テンションが上がってくるぜ。
いやーたかが公園。されど公園。
6年もの間、自宅の限られた空間が移動のすべてだった俺にとって、公園なんてもう前世時代欲しかった最新ゲーム機より心躍る存在だぜ。
俺はワクワクとドキドキが入り交じった気持ちを胸に、公園へ一歩また一歩とスキップをやめてゆっくりと近づいていった。
ちなみに、他の子に見られたら恥ずかしいからスキップをやめたんじゃないよ。ホントだよ。
「おっ!」
そんな事より子供が集まってるじゃない。
見たところ同年代っぽいし、さっそく声をけて遊びにいれてもらおうかな。
いやー誰かと遊ぶなんて前世以来じゃないの。
ワクワクするぜ。
まーしっかし、女の子ばっかりだなぁ。
というかたぶん全員女だよな、
えっと金髪でおかっぱヘアーの英語で言うならボブカットガールを囲んで黒髪のツインテールと黒髪のサイドポニーが何か言ってるのが見えてきたわけだが……。
何の遊びかね。ふむ?
くっくっくっ。こっそり聞いて、自然と会話に入るのもまた一興というものさ。
俺はゆっくり近づくと話してるやり取りが聞こえてきた。
「ってかさ、ワタシ言ったよね。黒色に変えるようにってさ」
「そうそう金髪で1人だけ目立つから親切で言ってあげたいのにナ・マ・イ・キ」
「だっだけど……」
ふむ。遊びっていうか、これいじめ?
「仕方ないわね。このスプレーで髪の毛染めてあげる」
「えっやっやだ。やめてっ!」
どうやらいじめ確定みたいである。
サイドポニーの女の子が金髪の子に抱きついて身動きを封じて、ツインテールの女の子がスプレーを見せつけるようにゆっくりと近づいているのがわかる。
……ってのんびり見てる場合じゃないって。
しかし助けるにしても、この時代の女の子は天変地異前の男より身体能力があるらしいし。
へたに話しかけて助けられず余計酷い事になる可能性も……
……こりゃあ不意打ちしかねぇな。
俺はそう考えると全速力で公園の女の子達へ向かって走り出した。
「男女平等キィィィィィィィィック」
そう叫びながら、呆気にとられてるスプレーを持った女の子に俺はドロップキックをかましてやった。
吹っ飛ばされる女の子。
叫び声も何もあげないが、大丈夫……だよな?
「あっあんた何なの?何してくれちゃってんのよ!」
金髪の子を離し俺に詰め寄るサイドポニーの女の子。
俺は彼女にも攻撃をぶちかました。
「男女平等チョォォォォォォォォップ」
そう叫び。
相手の首元に左右同時攻撃をクリーンヒットさせた結果、半泣きで屈み込むサイドポニーの子。
「あんた、何処誰だか知らないけどやってくれたわね……!」
ドロップキックは大事に至らなかったらしく、泣き顔1つ見せず立ち上がろうとしているツインテールの子。
……意外に無事すぎて困る。
いや、怪我したら良かったとは言わんが、これ2人に殴られたらやばいよな。
よっし、逃げよう。
「いじめてる奴に天誅を下しただけだ、いじめた自分の行いを後悔しな!」
この体6歳児と同じぐらいの年代の女の子に果たして天誅とか後悔とか通じるのか不明だが、そんな事より逃げるが勝ちよ。
俺は呆然と立ち尽くしている金髪の子の手を取ると自宅に向かって走り出した。
未来転生~男女比1:500の世界へようこそ! あおいろ @aoiro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。未来転生~男女比1:500の世界へようこそ!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます