未来転生~男女比1:500の世界へようこそ!

あおいろ

第1話

 人は緊急事態では案外冷静になるものである。

ちなみにこの言葉は、今まさに、東京タワーから落下中という事態に陥っている実体験に基づくモノであり、つまりただの現実逃避だ。

 あれは、ほんのさっきの出来事である。

 現在高校三年生、俺、櫻木 大地は、修学旅行で大阪を離れ東京にやってきた。

 学校では今時東京タワーかよ。スカイツリーに行けや!と突っ込みの嵐が巻き起こったのは言うまでも無い。

 だがしかし、天候に左右されすぎるスカイツリーより東京タワーを学校は選択したわけで、たいして乗り気でもなかったのだが、それでも修学旅行なのだ。

 高さに驚き、みんなでふざけてテンションも上がりまくり、下の道路が見えるガラスの板っぽいゾーンにやってきた時、俺はそこから落下したのだ。


 東京タワー閉鎖されるだろうな、一時的にだろうけど。

 修学旅行は……、まぁうちのクラス以外特に気にせず進行されそうだ。

 何よりうちの家族に何て伝わるのか、どんな反応をするのか。

 きちんと悲しんでくれるだろうか。

 それにしても、こう緊急時には脳が反応して周囲がスローモーションになるというが、これだけ色々考えて、まだ激突しないんだな……。

 落下してるなぁ……俺すげぇー冷静だわ……。


「しにたくねぇ、しにたくねーよ、誰か誰かたすけてくれ!」


俺は無駄だと思いながらも恐怖で目を閉じたままそう叫ばずには居られなかった。


「えっ」


 叫んだ直後ぐらいからだろうか、ふと何かおかしいと自分の中の違和感を覚えた。

 そう、なんというか落下しているという加速感や浮遊感がそういうのが無いのだ。

少なくとも最初は感じていたはずのそれがない。

 いや、脳が反応してスローモーションみたいになってるから、なのか?

 そこで俺は閉じていた目をおそるおそる開くと、そこは空中では無く暗闇に包まれたどこかだった。 

 いやいやいや、何これ。


「もう考え事はよろしいですか?」


 突然、脳に響くように聞こえる可愛い声。

 意味が変わらず周囲を見渡すが何もない暗闇のままだ、当然誰もいない。

 いや、っていうかこんな暗いのに光とかなくて、なんで俺は自分の体が見えているんだ……。

 改めて自分の体を見下ろす、くっきりはっきりライトアップされたように見えている自分の体。

……何これ、あの世?

 実は俺死んでだ?

 

「ですね♪」


 いや何がだよ。

 そんな明るい声で言われても……。

 此処があの世だって言いたいのか?


「んーと、ちょっと違いますよ。ただあなたが現世からさよならするのは確定ですね♪」


 ああもう、無駄にテンション高いし声は明るいし!なんなのおまえ!

 というか何この状況、夢か夢なのか。

 そうだ、そうちがいない。

 俺はありえない状況の連続にこれは、明日修学旅行を控えた前日の夜に見ているリアル過ぎる夢だと悟った。、

 だって東京タワーから落下だよ?

 その上に落下中にへんな空間に飛ばされて、何故か心の声に反応する見えない存在とか……。

 そりゃあ夢でしょ。


「ノンノン、夢ではないですねー♪ まぁ所謂、未知先案内人って奴ですよ私は」


みちさき?

俺はこれが夢だと悟り冷静に心の中で聞き返した。


「ええ、こことは違うあなたにとっての未知の世界を案内しますよって意味です♪」


いやもう全然案内されてないんですけど。

案内されてる感0なんですけど、唐突にこんな所に連れてこられて意味不明なんですけど

と心の思いをぶちまけた。

どうせ夢だし、これぐらいハイテンションに突っ込めば興奮して目が覚めるよね


「そんな事言われましても、私は規定にそって行動してるだけですので♪あとこれ夢じゃないですからね」


つまりあれだ。明晰夢だな。

うんそうだ。夢と自覚して夢の中で好きに色々できるっていう何かそういう奴。


「全然ちがいますよ♪

、ただ話が進まないので、それでもいいんですけど。まぁ後で色々言われても困りますから。少し分かりやすく戻しましょうか」


そう脳に響く可愛い声が言うと、周囲の暗闇は消え去り、俺はあと少しで道路に激突する形で体が停止、いやゆっくりと落ちて言っている。

何だよ……これ。

夢だよな。すげぇーリアルだけど夢なんだよな……。


「ですから……、ああもういいです。とりあえず聞いて下さい。

もうあんまり時間がないので説明しますと、このままだとあなたは死にます。死ぬと肉体が壊れ幽体が抜け出ます、しかしそうすると魂に負荷がかかり修復する必要が出てくるのですが、修復するとその過程で記憶を失います。それが転生。新たな人生のまくわけなわけですよ」


 つまり夢では無く俺はこのあと魂の修復というのを受けて、何もかも忘れて新しい人生へって事か?


「ええ、ですがですね♪なんと運が良い、こうして未知先案内人の目に止まった人は死ぬ前に幽体や魂に負荷がかかる前に切り離し、貴方たちのいう所のあの世に連れて行く、そうすると魂を修復する必要がなくなるので、記憶を失わず転生が出来、さらに修復に使用されるはずだったエネルギーを転生のさいにプラス使用が可能なんですよ♪」


なっなるほど。よく分からんけど、記憶を失わず転生できると……。

やっぱり夢だろこれ。とジリジリと地面が近づくなか焦りながら俺は心の中で思った。


「でですね。、まあ簡単に言うと、このまま激突して苦しみぬいた後記憶を消されて転生するか、今この場で魂だけ切り離され、激突の痛みを受けずこちらの用意した転生プランに乗って頂くか選んで下さいって事です」


夢だと思うけど。けど夢だったとしても、これ選びようがないよね?

っていうか実質1択じゃねーかよ。

この状況で、激突して苦しむ選択をするやつはいないよね?。


「ぱんぱかぱーん♪ 転生役所へようこそ」


 心の中で魂を切り離されて用意されたとか言う転生プランに乗る意思を固めたら、今度は目の前が道路という地面では無く、普通の応接室のような所にソファーに座ってた……。

うん、やっぱり夢だこれ。

俺は片足をあげ、逆の手であげウインクをかますピンクの髪のハイテンションな美少女を見つめながらそう思った。


「ああーえと、どうも」

「もう♪暗いですよ、明るく行きましょーよ、人生はバラ色ですよ」


 両手を広げそんな事を言い、どんな効果か分からんがあの世の不思議なパワーか周囲にアニメキャラの背景のごとくバラが咲き誇る光景が目に飛び込む。


「さぁあなたの幸せな来世に乾杯♪」


そう言って薔薇を差し出してきたのでなんとなく受け取った。

さすが夢だぜ……。

夢だけど時間がないらしいから、いちおう話を勧めてもらうかな。


「あの、それで転生プランとかいうのは……」


「ではでは早速転生プランをご用意しましたので説明させていただきますね。」


そう言って着ているスーツのスカートを抑えるようにして向かいのソファーに座るピンク髪の人。

ピンク髪でスーツ姿。

もうコスプレにしかみえません。


「じゃじゃーん、あなたにご用意するのは魂の修復使われなかったエネルギーを活用して、転生用の肉体に補正をかけて、つよーくなっての異世界ライフでーす。これで貴方は物語の主人公のような、歴史書に名を残す英雄のような人生を努力次第で歩めるのでーす、どうぞ。ここにサイン下さいね。すぐに転生準備に入りますので」


いや異世界って……。

しかも努力したら歩めるって別にそんな事望んでいないんだが。

そもそもどんな世界か説明受けてないっていうね。


「いやあの、そんなすぐにサインとか無理です。この世界しか無いんですか?そのこの世界の説明を結局何も受けてないんですけど」


俺のこの言葉にしぶーい顔をするピンク髪の人。


「きになっちゃう感じですか?」

「そりゃ気になるでしょう。今後自分が暮らす世界の事なんだからさ。そもそも転生プランを受けるを選んだけど、この今用意された世界に行く事を無条件で選んだわけじゃないしさ」


ぶーっと頬を膨らませるピンクの人。

なんだろう、このままほいほいサインしちゃいけないって俺の第六感が告げてるのを感じる。

 ひたすらイヤな感じしかしない。


「んーまぁあれですよ。えーと。そうそう! こうゲームみたいな世界」


 いやいや、ゲームみたいな世界って。

 ギャルゲみたいな現代が舞台ならいいけどファンタジーな世界だとイヤすぎるぞ。

 そんな、現代の日本で生まれ育った人が生きられると思えないしさ。

 まぁ観光としてなら楽しそうだけど。


「どういうゲームですか?」

「まぁなんていうかそう、魔法に剣が出てくるRPGみたいな?」


 俺の質問に対して目を泳がせながら答えるピンクの人。

 これ絶対地雷だよね。

「断ります」


俺は即答した。

いや当然だろう。ファンタジーだぜファンタジー。

何度だって言おう。

現代に生まれ育った日本人は、そんな環境では生きていけない。

少なくとも俺には無理だ。

そもそもいくら強くなったって、何で命の危険を感じる世界に行かないといけないのか。


「あこがれませんか?」

「あこがれません!現代日本で暮らして平和にどっぷり使った自分には無理です、そもそもその異世界って、技術レベルとか文化とかどのレベルなんですか?」

「えーっと、まぁそうですね、近代化前のまぁ昔のヨーロッパあたり中世時代ってかんじてすかね」


いやいや無理だろう。

現代の先進国なヨーロッパでも日本より治安が悪いのに中世レベル。

しかもモンスターまでいるとか暮らしたくないわ


「えーじゃあどういう世界がいいんですかー」

何か凄くだるそうに返答するピンク髪の人。

そんなにファンタジーに飛ばしたいのかよ。

俺は平和な先進国が良い。そうだ!


「えーっと、科学が凄く進んだ近未来的な平和な世界とか」

「あーそういうの無理です」


 即答かよ!


「いやいや考えてもみたくださいよ、進んだ平和な世界なんて人気で埋まってて空きがあるわけないじゃないですか。」

「じゃどういうのが空いてるんですか?」

「さっきも言いましたけど、ファンタジーです。ファンタジーな世界ならいっぱいあいてますよ」


だからファンタジーはイヤなんだって。

……いやまてよ。

ファンタジーといっても何も中世ヨーロッパみたいな選ばなければいいじゃね


「平和で争いが無くて、魔法的な力が発展して魔法科学とかあって現代日本と変わらない生活が送れる世界で」

「無理です」


すげぇ笑顔で無理とか言われたし……。


「いやファンタジー世界はいっぱい空きがあるって……」

「シャラップ!もっと分かりやすくいいますよまったく、危険で危ないファンタジーの世界はいっぱいあまってますって事です。そもそも記憶持ち越し転生というのは健康体の人が自ら命を絶とうとしたわけで無く、事故等で仕方なく命を落としてしまう。そういう人に死ぬ前に提供してるんです。」


すげぇ早口でピンク髪の人が説明してくれたが

危険で危なくて空きがあるって人死にまくって違う世界に転生してるって事なんじゃ


「ええあなたの考えている通りですよ。っていうか無駄に話してたから2.3分ほどしか時間内ですよ、どうします?」

「どうしますって……。」


このまま日本に転生とか無理なのだろうか。

もう強制的にファンタジーなら少しでもマシな所を選ばないと……

って夢だろ、何俺はマジに考えてんだ。


「あーもう、普通に日本に転生したい……」


 俺がそうつぶやくとピンク髪の人のまゆがぴくっと動いた。


「じゃあしますか、日本への転生?」

「へっ……えっ。ええええええええええええええ」


日本への転生可能なのかよ

俺は前のめりになってピンク髪の人に伝えた。


「日本への転生でお願いします」

「ふう。ファンタジーに転生した場合の補正とは、イケメン化、貴族王族への転生、常人の何倍もの様々な素質を手にできるんですよ」

「日本で」


 俺の頑なな日本への思い頭を抱えるピンク髪の人。

 どんなけファンタジー世界に送りたいんだよ。


「あーあ、もう。ハイテンションに明るくふざけて押し切ってファンタジー世界紹介したらほいほい飛び乗ってくれると思ったんだけどなー……」

「おいっ!」

「はいはい日本転生ですね、平和な日本へ……了解。

ああいちおう言っときますけど本来平和で安全な世界っていうのは人気で空いてないんですよね。ですが貴方は日本人ですらね、転生はいちおう可能なんですけど……人気地ですから。余分エネルギーでの補正は難しいんですよ。ファンタジーな世界と違って貴方が他に選べるのはせいぜい好きな性別を選べて平均的な能力や健康を保証される程度です」


いやそれで十分だよ

俺はファンタジー世界で危険に満ちあふれるより、平和な日本での第二の人生を選択した。

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