カン君という主人公格の幽霊と霊能力者を主軸に、三人称プラス一人称で語られる現代ホラー。
ホラー要素、今作ではいわゆる「怖い話」が各章の芯として語られる。その語り口の醸し出す雰囲気は抜群。原因不明な霊障現象を鎮めるため、同業者から依頼を受け、カン君たちが謎に迫る。
カン君が付き従う強力な力を持つチャーミングな少女、筑紫。彼女と幽霊のカン君が出遭う相手は一体何モノなのか。どういう経緯で霊となり、人に害を為す存在となったのか。ディテールを詰めているがゆえに演出される暗く、原始的な恐怖を煽る筆致は読み応え有り。
各霊能者も幽霊であるカン君も、霊を鎮める方法を持っており、その解決への道筋が語られるが、今作の良さは霊とのバトルシーンではない。どうして痛ましい事件が起きたのか。怨恨、恐怖、興味本位、欲望……人間側からも人間を闇へと誘う未知の領域の住人からも滲み出てくる貪欲さ、飾ることのない人間臭さが表現されていることが魅力と言えよう。
そんな泥臭く、血なまぐさい話の中、純真なカン君の思いや霊障に挑むことのできる人間の心の動きがただのホラーというだけではないコントラストとなって物語を彩る。
もったいない点もある。カン君の立場や想いがハッキリしない序盤において感情移入がしづらい点。ホラー要素を押し出しているものの、終盤は霊能者達の思惑に話が逸れていく点。三章までを1巻と考えるとスッキリとしない、というのはモヤモヤするところだ。
しかし、前述したように肝心のホラー部分の描写は素晴らしい。登場人物たちの動きを出しゃばり過ぎかちょうどいいアクセントと捉えるかは読者によって評価は分かれるところだと思われるが、物語を構成するのに不必要な人物は出てこないので問題とはならない。
総じてグッド。ゆえに、ベリーグッド。
中々良い物語でした。ご馳走様です。
(3/2時点)第1話完。といったところでしょうか。
まだまだ謎が多そうですが、基本的には都市伝説的な霊障を追っていく形なのかな?
最初の「腐水」はいかにも現代怪談に出てきそうな話。
それを紐解くと、裏の裏と怪談が連鎖してくのはつい身を乗り出して読んでしまった。
所々に気になるワードがちりばめられていてそれをどう回収していくかで感想に倍率かかりそうです。
人間と霊の他にも名もなき存在があるようで、それらとの関係も気になるところ。
印象に残ったのは「何故」と「理解」ということば。
霊に対しては憑依でなんとかなりそうだけど、名もなき存在はどうするんだろう。
カン君にとって理解することが唯一の武器っぽいので、それが出来ない存在には……?
出てくるたびに筑紫さまがブッパしてたら絶対BAD ENDな気が……。
その辺も含め期待。