登場人物が魅力的、描写の取捨選択も上手い

端的に言って、「読みやすい」です。
異世界召喚系勇者御一行に現世界人が戸惑う様子(そうだよね、小説だと王道な展開だけど現実として見たら意味わからないよね)、中間管理職感が楽しいのは他の方のレビューでもある通り。
ですが、なんといっても世界観を文章にするにあたっての、情報の取捨選択が上手い。
小説において、人名なりアイテム名なり地名なり、「名前」というのは、多すぎると読み手の頭の中がとっ散らかりやすくなるものだと思います(少なくとも私はなります)。
しかし、特に、登場人物は増えやすいように思います。新しい登場人物がいると次の話を回しやすくなるし、単純に「人が沢山いる」という描写の説得力が増すからです。
反面、美味しい設定があってもその後登場させる余裕がなくなったり、1人1人の描写が減ったり、名前が付いていると登場時にモブなのかモブじゃないのかわからなくなったり、といったデメリットがあります。
この作品の場合、設定の妙もあり、既存のキャラクターで話を回せるし、今後も出てきそうな設定の新キャラクターも、ちゃんと出てきそうに描かれるので安心します。
世界観に関する固有名詞の量も手広くなりすぎず、漢字とルビでオリジナリティーを出しつつ、漢字なのでパッと見で名前と意味が紐付きやすい。
戦闘シーンの描写も上手いですし、キャラクターが本当に魅力的なので、いつかアニメ化してほしい作品です。