起床
「悠く~ん起きてる~?」
ドアの向こうから声が聞こえる、幼い頃から何度も何度も聞いた馴染みのある声だ。
悠くんと呼ばれたこの少年の名前は
180㎝に届くぐらいの平均より少し上の身長、髪は漆黒を思わせるほど黒くツヤのある母親譲りの美しい髪。手足は男性としては細いが引き締まっていて所謂細マッチョに近い。そして目を惹くのがそのルックス、髪同様母親譲りの美形だ。
その声が目覚ましがわりとなり目が覚めるのが僕の日常となっている。身体を起こしベッドから降り、着替えをしようとクローゼットに手をかけたとき、ドアが開き先程の声の主が部屋の中へ頭だけ入れこちらを覗かせてきた。
「返事がないけどまだ寝てるの?」
「いやもう起きてるよ、おはよう優衣ちゃん」
「もう~起きてるなら返事ぐらいしてよぅ」
「ごめんごめん。でも朝のあいさつくらいはドア越しじゃなくて直接目を合わせてしたいからさ」
僕が優衣ちゃんと言ったこの子の名前は
「悠くん、わたし一階で待ってるから」
「わかった、僕も着替えたら直ぐに行くよ」
優衣ちゃんが階段を降り一階に向かう足音が耳に入りながら僕は手早く自分の通っている学校の制服に着替える。そして忘れ物がないかカバンの中を再確認し腕時計型の携帯端末を腕に着け一階へと向かう。
「母さ……そうだった……母さんは昨日から父さんのアメリカ出張に着いていっていないんだった」
いつも通り母親にあいさつしようとした直前に、現在この家に母親……というより両親が出張でいないことを思い出す。
不幸な話もあるというものだ。父さんのアメリカへの出張は一昨日急に決まったらしく、しかも直ぐに行かなくてはいけないものだったらしい。
父さんだけでは不安だと一人で行こうとしていた父さんの反対を押しきった母さんもアメリカに行き、今この家に残されているのは一人息子の僕だけだ。
ちなみに何故僕が両親に着いていかず一人残っているかと言うと、丁度その時タイミング悪く二泊三日の宿泊行事と重なってしまったからである。
父さんが母さんをこの家に残そうとしたのは、僕に親のいない生活をさせたくないという想いと高校生に一人暮らしをさせるのは不安だという理由を昨日父さんから掛かってきた電話で聞いた。その話を聞いていた母さんは、僕を一人にさせるよりも父さんを一人にさせる方が余程不安だと。
そう僕の父さんは生活能力が皆無なのだ、掃除洗濯なんてもってのほか。料理だって卵を割ることすら出来ず、精々カップ麺にお湯を淹れることが限度。仕事ではスゴい複雑なコンピューターを手足のように扱うくせに、家では電子レンジや炊飯器を扱えないという始末。そりゃ母さん着いていくわけだ。
気を取り直して朝食を食べよう、ご飯は炊いてなかったからトーストでも焼こうかな。
プラネットオンライン ムルムル @toritodon
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