概要
台本はない。客は全員、俺を王子だと思っている
「明日一日、バルコニーで手を振るだけだ。口は開くな」
旅一座の役者の俺、ヤネクは、楽屋に積まれた金貨の袋を見て、二つ返事で引き受けた。第三王子エメリヒ殿下は、人前に出ると声が出なくなる。顔がそっくりの俺が、一日だけ代わりに立つ。
翌日、バルコニー。広場を埋めた民衆の前で、第一王子が笑った。
「弟よ。たまには挨拶の一つもしてみよ」
屋根裏の小窓から、本物が紙を掲げている。『何も言うな』
無理だ。客が待っている。
俺は腹から声を出して、昨夜の芝居の、王の台詞を言ってしまった。広場が静まり返り、それから、割れるような歓声。
その夜。屋根裏で、同じ顔が泣きそうに怒っていた。
「僕はあんな立派なことは言わない! やり直し!」
「やり直しがきくのは稽古だけだ、殿下。本番は一回だ」
侍
旅一座の役者の俺、ヤネクは、楽屋に積まれた金貨の袋を見て、二つ返事で引き受けた。第三王子エメリヒ殿下は、人前に出ると声が出なくなる。顔がそっくりの俺が、一日だけ代わりに立つ。
翌日、バルコニー。広場を埋めた民衆の前で、第一王子が笑った。
「弟よ。たまには挨拶の一つもしてみよ」
屋根裏の小窓から、本物が紙を掲げている。『何も言うな』
無理だ。客が待っている。
俺は腹から声を出して、昨夜の芝居の、王の台詞を言ってしまった。広場が静まり返り、それから、割れるような歓声。
その夜。屋根裏で、同じ顔が泣きそうに怒っていた。
「僕はあんな立派なことは言わない! やり直し!」
「やり直しがきくのは稽古だけだ、殿下。本番は一回だ」
侍
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