概要
ローマ字の行間に、啄木が隠した心が息づいている。
春の光に包まれた本郷の裏長屋に残された、石川啄木のローマ字日記。そこには、短歌の清らかな世界の陰に隠された、弱さ、欲望、孤独、逃避など、人間・啄木の生々しい本音が綴られていた。日本語では語れなかった心の声を、ローマ字に託した啄木。妻・節子はその影を裁かずに受け止め、友・金田一京助は葛藤の末、その記録を未来へ伝える道を選ぶ。秘められた言葉は、時を越えて一人の文学者の真実を浮かび上がらせる。春の光とローマ字の行間に揺れる心を通して、人間の弱さと、それを抱きしめる愛の深さを静かに描く物語。