概要
尾は七本。なのに、九尾殺人。——数が、合わない。
長野の山奥に、七人の作家が集められた。骨格、写真、家系図、料理、身体、相場、そして子どもの絵。どれも、失われたものを別のかたちで残す仕事だ。谷は圏外で、行き帰りも連絡も主催者が握っている。
この谷には『九尾隠し』という言い伝えがある。山を越えて逃げようとした者を、狐が尾に変えて繋ぎ止める、という話だ。滞在が始まってまもなく、作家の一人が奥座敷で死んだ。体のまわりには、墨で八本の尾が描かれていた。殺し方も、飾りつけも、伝承をそのままなぞった一つの作品のようだった。
二人目の失踪。割れた白い皿。閉じた谷の時計に残る、七秒のずれ。手がかりは、どれも現場に残されていた。
ただ、真白奏が持ち込んだ一枚の児童画だけが、谷の筋書きと合わない。描かれた尾は七本。しかも一本は、途中でほどけている。逃げ切
この谷には『九尾隠し』という言い伝えがある。山を越えて逃げようとした者を、狐が尾に変えて繋ぎ止める、という話だ。滞在が始まってまもなく、作家の一人が奥座敷で死んだ。体のまわりには、墨で八本の尾が描かれていた。殺し方も、飾りつけも、伝承をそのままなぞった一つの作品のようだった。
二人目の失踪。割れた白い皿。閉じた谷の時計に残る、七秒のずれ。手がかりは、どれも現場に残されていた。
ただ、真白奏が持ち込んだ一枚の児童画だけが、谷の筋書きと合わない。描かれた尾は七本。しかも一本は、途中でほどけている。逃げ切
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!細部から詰めていく推理が気持ちいい
線の向き、記録の間隔、時計のわずかなずれ。
この作品の推理は、そうした小さな違和感を一つずつ拾って、丁寧に詰めていくタイプです。
中でも、揃いすぎた記録を「人間が迷いながら残したものではない」と読む場面には唸りました。
派手なトリックを一発で見せるのではなく、論理を積み上げて読者を納得させていく。本格ミステリ好きにはたまらない手触りです。
それでいて会話のテンポがよく、手がかりの多さのわりにまったく迷子になりません。緻密なのに読みやすい。この両立が見事です。
「尾は七本、殺人は九尾」という数の食い違いが、どう回収されるのか楽しみにしています。