概要
神経を鎮めたあとに、何が残るんだろう。
木が怖かった。そう言うと頭がおかしいと思われるけれど、本当に怖かったんだから仕方がない。
膠原病とステロイドで、顔は丸く膨れた。薬は朝に八錠、昼に四錠、夜に十一錠。東京の劇団を捨てて逃げ帰った長崎の平屋から、行ける場所は病院とスーパーだけだ。
外に出られる朝は、イチョウの木の前で太極拳をする。毎日同じ敷石の、同じ場所で。
思い出しているのは、二〇一三年のあの春のことだ。
膠原病とステロイドで、顔は丸く膨れた。薬は朝に八錠、昼に四錠、夜に十一錠。東京の劇団を捨てて逃げ帰った長崎の平屋から、行ける場所は病院とスーパーだけだ。
外に出られる朝は、イチョウの木の前で太極拳をする。毎日同じ敷石の、同じ場所で。
思い出しているのは、二〇一三年のあの春のことだ。
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- ★★★ Excellent!!!鎮まらない言葉の、その奥へ
木が怖い。
そんな告白から始まる、ひとりの人間の思考に、いつの間にか引きずり込まれていました。
痛み、記憶、怒り、日々の細部。次から次へと溢れる言葉には、息継ぎを忘れてしまいそうなほどの密度があります。
理解したいと思うのに、すべてには頷けない。それでも、簡単に目を逸らすことができない。
読んでいるうちに、誰かを理解することと、誰かを正しいと思うことの境目さえ、曖昧になっていくようでした。
決して心地よいばかりの読書ではありません。
けれど、この文章でしか触れられないものが確かにある。読み終えた後も、あの木の姿が頭から離れませんでした。