概要
花婿の欄は、まだ空白でした
「乾杯しよう、エーリカ。一年、ご苦労だった」
毒の杯を渡したのは、夫でした。
伯爵令嬢エーリカ・ロスヴァインは、結婚一年目の冬至の夜会で、夫フィリベルトと義妹ベルナデッテに毒を盛られて死んだ。実家の商会は夫のものになり、葬儀に来たのは、父の政敵と噂された北の公爵ユスティンただ一人だった。
目を開けると、花嫁衣装の鏡の前。「お嬢様、あと一刻で式でございます」。
祭壇の前で、エーリカは花婿の手を離した。参列席の最後列、義理で招かれただけの公爵の前まで歩き、手袋のまま手を差し出す。「あなた。私と結婚してくださいませんか」。
ざわめく聖堂で、〈冷血〉の公爵はただ一言、「喜んで」と答えた。――まるで、ずっとその言葉を待っていたように。
一周目の記憶で、奪われるはずだった商会を守り、嘘を先回
毒の杯を渡したのは、夫でした。
伯爵令嬢エーリカ・ロスヴァインは、結婚一年目の冬至の夜会で、夫フィリベルトと義妹ベルナデッテに毒を盛られて死んだ。実家の商会は夫のものになり、葬儀に来たのは、父の政敵と噂された北の公爵ユスティンただ一人だった。
目を開けると、花嫁衣装の鏡の前。「お嬢様、あと一刻で式でございます」。
祭壇の前で、エーリカは花婿の手を離した。参列席の最後列、義理で招かれただけの公爵の前まで歩き、手袋のまま手を差し出す。「あなた。私と結婚してくださいませんか」。
ざわめく聖堂で、〈冷血〉の公爵はただ一言、「喜んで」と答えた。――まるで、ずっとその言葉を待っていたように。
一周目の記憶で、奪われるはずだった商会を守り、嘘を先回
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