今日は抗ガン剤治療の二回目。朝七時に家を出て、帰宅したのは午後三時。
グッタリだ。もうグッタリだ。
体調にもほぼ変化はない。
顎は相変わらず痛いし、顎の下の傷は延々と白い膿を吐き出し続けている。
命の削られて行く感覚。
抗う術はない訳ではないが、ほぼなくなりつつある。
薬や治療法はある。だがそれを使うための金がない。
なんとかごまかしごまかし使ってきた三枚のクレジットカードも、
ショッピング枠の残高がもう合計数万円。
キャッシング枠も三万円くらいしか残っていない。
今月は何とか乗り越えられると思うが、来月は入院がある。
最低でも一度、場合によっては二度入院しなくてはならない。
高額療養費制度の限度額認定があっても、現金で十万円は必要になる。
それを用意するのは非常に難しい現状。
誰かに金を借りるという手はあるのかも知れない。
こんな頭でも素直に下げて金を貸してくれと言えば
貸してくれる人もいる可能性はある。
だが一つ大きな問題がある。
私には金を返す目処がまったく何一つ立たないということだ。
つまり、金をくれと言っているのと同じなのである。
千円や二千円なら恵んでくれる人もいるかも知れない。
だが十万円の大金を、何が悲しゅうてこんなヤツにくれてやらねばならんのだ。
冗談も休み休み言えと普通の感覚ならば思うはずだろう。
自分がその立場ならきっと思う。
それに、来月を乗り越えられてもその後はどうするのか。
抗ガン剤と放射線の集中砲火でガン細胞が死に絶えてくれるのなら、
この先もう二度と再発しないというのなら、
まだ何とかできる目は残っている。
でもそれが望み薄であることは自分が一番よくわかっている。
ガンとの戦いは延々続く。そして戦い続けられる経済力はない。
自分がまだ若くてファンのたくさんいる人気作家なら
クラウドファンディングという手もあったのだろうが、
残念ながらそんなものが成立するはずもなかろう。
他人の心を動かせるだけの見返りを用意できないのだから。
ほぼ、詰みである。
どうしようもない。手も足も出ない。現実の壁は頑強だ。
別に死にたい訳ではないし諦めたい訳でもない。
まだ何か手はないかと考えてはいる。だが答は見つからない。
まあ江戸川乱歩賞でも受賞して賞金三百万円が手に入ったら
借金なんてまとめてチャラにできるのだが、
それは最低でも来年七月まで生き延びられて初めて言えることだ。
いまの自分にはただの妄想でしかない。いろんな意味で。
さて、いったいどうしたものだろう。