奥森　蛍

朝から春の嵐が吹き荒れていた。
野外では口笛を吹いたような風音が鳴り、天蓋がバサバサと爆音を立てる。
ハウスがずいぶん揺れるなあと思いながら収穫を終えて作業所に戻った。この頃いちごの収穫量が減っていて、今日も少ない。
パック詰めはとにかく時間との勝負（なぜなら終わらないと帰れないから）
頑張るべし、頑張るべし！
……と思ったらいつの間にか男手がいない。
あれ、社員さんも奥さんも？
自然と人が減ってゆきどうしたと思ったら奥さんがゼェゼェと息を切らしながら作業所に駆け込んできた。

「ハウスが破れてん！」

まじかーーーーー！！！

「あと、注文が入ってるから至急詰めて！」

嵐のような言伝を終えてハウスに戻る奥さんと入れ替わりに社員さんが駆け込んでくる。

「今から収穫するからAさんとBさんは来てください！　急いで！」

説明すると収穫終わったばっかしですが、暴風が吹き荒れていちご同士がぶつかると痛むんだってさ。だから明日採る分まで今日採りに行きました。
ということでみんな出払っちゃったから残された3人で静かにパック詰めしてました。
もうじきお客さんが来るから大急ぎで頑張って詰めたの。頑張って詰めたのにね、いつまで経っても来ないからどうしたと思ったら注文分はパック詰め出来ないからって経営者がお客さんに断りを入れたそうです。がーんΣ（ﾟдﾟlll）

ちなみに破れたハウスは保険が下りるんだってさ。そりゃそうだよね。
今日はこんな感じで朝から色々とアレだった。
まあいい、休みまであと１日頑張ろう！