「あ、白いちごや!」
パック詰めの休憩時間、奥さんがコンテナを見て声を上げた。
わたしが勤めているのは紅ほっぺの農場なのだが稀に白いちごが採れることがある。
ここでの白いちごは青い状態で間違って採ってしまったいちごのことではなく、突然変異で色抜けしてしまったいちごのことをさす。
スーパーで売っている白いちごは若干クリーム色だが、それとも違って突然変異の白いちごは純白。透けるほど真っ白なのだ。
規格外なので出荷することはなく、見たことがない人が大半だろう。わたしもこの時初めて見た。
「食べてみる? めっちゃ甘いで」
しかし、奥さんのせっかくの申し出なのにみんな遠慮しあって誰も声を上げない。
「食べたい!」(←すぐ食べる誰かさん)
ハグハグ……
「めっちゃ甘い!!」
そう、なんというか酸味が抜けて甘さだけが残ったスイーツのようないちごだった。
感激のあまりわたしは提案する。
「幻の白いちごめちゃ甘いよって書いて直売で一個100円で売ったらどうですか?」
わたしの下らない案は却下された。
はー、しかし食べた後で後悔。写真撮ってたら良かったね。