朝起きて、メガネがないことに気付く。
たしかに枕の左側に昨夜そっと置いたはずなのに。
ベッドの下にでも落ちちまったのかと、探してみたところでない。
実は記憶違いでメガネをかけながら寝たのかと、こめかみに手を当てたところであるわけない。
そりゃあそうさ、視界はこんなにもしっかりとぼやけているんだもの。
果たして、メガネはどこにあったか。
ずっと枕の右側にあったとさ。
寒いなと、エアコンのリモコンを探す。これも見当たらない。
昨夜タイマーセットをしてからどこに置いたんだっけ?
これこそ枕の左側にちゃんと置いたはず。
果たして、きゃつは敷布団とヘッドボードの間に挟まっていた。
リモコンを引っ張り出してやる。
するとそのとき、キラリと光るものがベッドの下に見えた。リモコンに今の今まで隠れて見えていなかったみたい。
それも引っ張り出してやる。SEIKOの腕時計だった。
月の初めに失くしてから、もはや諦めていた。
だけどひょんなきっかけで、三週間ぶりに手に取れた。
小説のタネもきっとそんな風に隠れているかもしれない。
枕の右側か、あるいはひょんな隙間に。