『偶像の暁』は、もともとは私がヘンリー・ダーガーに憧れて、
自分のためだけに書いたものでしたので、説明不足な箇所があったと思います。ここで解説っぽいものを、書いておこうと思います。
第4話プロローグにて、社会学者ジェイムズ・イレイザーの『金枝篇』の内容の一部が語られていますが、どうやら、これは初版には無い文章のようです。私が参考にしたのは、講談社学術文庫から出ている『図説 金枝篇』からなのですが、ちくま学芸文庫から出ているものには、載っていませんでした。
第5話2章にて、
「じゃあ、今夜は大地主になった夢でも見ましょうか」
「これでも阿呆の知恵を信じない奴がいるだろうか」
というやり取りがありますが、これはゲーテの『ファウスト』第二部の台詞です。
二人はゲーテの『若きウェルテルの悩み』のことを話しており、ドイツ人である亜子に「ドイツ人なら当然知ってるよ」みたいなことを言われていたので、これで亜子の知識を試したのです。亜子は簡単に、その次のメフィストフェレスの台詞を喋ることができたということです。
第5話6章にて、
「ディオゲネスみたいなことを言っちゃって……」
と、ありますが、これは古代ギリシャの哲学者、ディオゲネスの逸話にある「偉大な闘技士が小娘に首を捻じ上げられているよ」という台詞からです。