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蛮人の夢 1

 明け方に夢を見た。俺は「都内の名画座」にいるらしく、巨大なスクリーンに映し出される「その日の最終上映」を観ていた。カテゴリー不明のモノクロ映画である。だが、日本で作られた映画であることは間違いない。登場人物は日本人にしか見えないし、全員が日本語を喋っているからである。但し、知っている顔は一人もいない。見知らぬ人々が、なぜ夢に出てくるのか?夢の不思議のひとつである。

 主人公が必死に守ろうとしていた息子が、実は息子ではなく、自分自身だった…というまったくわけのわからない幕切れが用意されていた。主人公が「それ」を悟った瞬間、息子の体が縦一文字に裂けて、中からガスボンベ風の物体が飛び出す。夢ならではの奇々怪々な展開であり、光景であった。

 終映後、家に帰ろうと、俺は「駐車場」に向かう。しかし、自分の車をどこにとめたのか、場所の記憶が完全に消えていた。散々探し回ったが、どうしても見つからない。途方に暮れて、地面にへたり込んでしまうが、自分が「車も持っていないし、十年以上、運転もしていない」ことにふと気づく。その刹那、夢の呪縛が解けた。

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