桜の咲く季節。 何気なく薄紅色の花を眺めているとき、ふと思い出した。 高校を卒業して新しい生活を迎えるときのことを。 私は進学のために、地元を離れた。 彼女は目標のために、地元…

私、那須野深瑚（なすの みこ）。中学二年生。 今日はこの冬一番の冷え込みとかで、今朝の通学が寒くてたまらない。 なのに、私の恋人の神前璃々那（かんざき りりな）は手袋もせずに可愛…

考え事をしていて電車を乗り過ごした僕。 電車を降りて引き返すか、会社まで少し余分に歩くか。 そのどちらも選ばなかった僕は、もう少しだけ乗っていることにした。 そこで「姐さん」と陰…

私が所属する女学院において、不遇な扱いを受けている彼女たちのために、私は立ち上がった。 これから向かうのは委員会予算会議だ。 私は委員長として、彼女たちの待遇改善のために少しでも…

客のいない退屈な午後。 店番をしていた私は、ショーケースの向こうでぴょこぴょこと跳ねるポニーテールに気がついた。 どうやら小さな子供がショーケースを覗こうとしているようだが……

俺には二十数年も引きずっている後悔がある。 高校生だった俺が空回りした挙句にやらかしたことを、四十路になってもいまだ忘れられずにいるのだ。 我ながら無駄で無意味で厄介なものを抱え…

放課後の図書室で仕事をしていた本荘紫織は、同じクラスの男子、江端から手紙を渡される。それはスマートフォンのメッセージアプリが全盛の今どきには珍しい『ラブレター』だったが、宛名は紫…

明日は紗耶とお出掛け。でも、楽しみ過ぎて眠れない。 そこでふと見上げた夜空には真っ白な半月が浮かんでいて――紗耶もこの月を見上げているのだろうか。