なんやかやスローペースでぼちぼち続いております「雪降る館のフィギュア」。
次の32話で一区切りとなります。
より具体的に言えば、32話までは「フレドリカにまつわる物語」でした。
基本的な部分において、彼女をとりまく諸々が導線として物語を引っ張っていました。少なくとも書いてる側はそんな建付けのつもりで書いていました。
で、33話からは「ウォルフにまつわる物語」へと移行してゆきます。
より具体的には今までぼちぼち撒いてきた要素、ウォルフが言うところの「お嬢さん」だとか、第七工廠・第八工廠だとか、追手の《機甲人形》だとか、何より『逃亡者としてのウォルフ』の去就。
これらが物語の前面に出てくる、そんな建付けとなってゆくはずです。
あと――これは11話あたりで触れたっきり直接の言及があんまりなかったので忘れられてるんじゃないかというの怖いですが、ウォルフは(「機甲少女」のヒロイン格である)ユイリィの制作者、《人形工匠》マードックの関係者で、ひいてはユイリィを含む《Lナンバー》の関係者である訳で。
その辺の事情や、ウォルフがそうしたものと関わりを得るに至った経緯なんかも、この先の導線になってゆく――はずです。
以上を踏まえたうえで。
三章でいくらか卑近な実像が言及された、エルフェルズ女伯ことドロティア様の話。
おおもとをただせば、「死にかけた主人公が雪に降り込められた館で銀髪メイド人形少女と出会ってウヒャーイ!!」みたいな頭悪い状況を成立させるための舞台装置として配置したのが、ドロティア様とその旦那のブレスク様だった訳ですが。
そんな経緯のアレでしたから、本編で「そういうひとがいました」という以上の形で言及する機会など、当初の段階ではさっぱり考えていませんでした。
少なくともふたりの肖像画を小道具として出した時点では、作中のような夫婦関係というのはさっぱり想定していませんでしたし、まず書く予定もありませんでした。
ただ、展開上今後触れる機会もないし、そもそもフレドリカにまつわるアレコレを語るうえでこのひとたちについてさっぱり言及がないのはどうなの? という根本的なところの疑問が出てきたがために、作中のような筋立ての話となりました。
書いてみたら書いてみたで今後の展開に関わりそうな要素はあんまりなかったので、煎じ詰めれば『私が書きたかっただけ』だったかな、という気も今はしていますけれど。
なお、ドロティアとブレスクの夫婦関係ですが、31話の以下のやり取りに集約されるかな、というのが書いた側の所見です。
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『知っているかしら、フレドリカ。彼はとうに額の広くなった、ひょうきんなばかりの老人を気取っていたけれど――背筋をしっかり伸ばして立てば、素晴らしく見栄えのする男性だったのよ』
『ブレスク様も同じことを仰っていました。見せていただく機会はありませんでしたが』
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――少なくとも外面だけ見れば絶世の美少女なフレドリカが見る機会のなかった『見栄えの良い姿』を、ドロティアは知っていました。
そういうことです。
ドロティア当人はだいぶん自虐的にとらえていますが――そして、それが決して故なきことでないのは、本編から察していただけるといいなぁというやつですが――このふたりの夫婦関係というのは、煎じ詰めれば上述のような形で言及されるものであったろう、と。
とりあえず書いた側としては、そんな塩梅で考えています。
以上、だいたいそんなこと考えながら書いてましたというやつでした。
いかがなものでしたでしょうか。
あとこれは完全に余談なのですが、多分フィギュアの方が初出になるかなぁとぼんやり思っていた(つまるところ「ウォルフの物語」の関係者であった)、ウォルフが言うところの「第七工廠を簒奪した、あの忌々しいクソ野郎」。
そういえば「機甲少女」の方で先に出てきてしまいました。
ぽっと出の、よくわからんちょい役みたいなアレでしたけれど。