• 異世界ファンタジー

極剣のスラッシュ 「ムラムラするッッッ!!!」&おしらせ


 フィオナは木剣職人として俺の弟子になって以来、度々俺の家に泊まっていく。

 ……いや、度々というか、頻繁というか、半ば同棲状態なのが実際の状況だ。

 一月の内、三分の二以上はウチで暮らしているだろう。だがまあ、それは別に良いんだ。

 しかし、由々しき問題もある。

 たまにとんでもない手作り料理を食べさせられること――も、確かに無視できない問題ではあるが、それの他に、もう一つ大きな問題があるのだ。

 それは……、


 ――ムラムラするッッッ!!!


 と、いうことだ。

 どういうことかと言うと、フィオナは暑がりなのか、風呂上がりにはやたらと薄着で家の中をウロウロしていることが多い。そういう時、紳士な俺は何となく視線を向ける先に困ってしまうので、とりあえず視線を下げ、尻を見ることにしている。紳士!

 一度、そんなに暑いなら服なんて脱いじまえよと善意から勧めてみたが、なぜか冷たい視線で射貫かれた。

 俺は視線を甘んじて受け入れた。紳士!

 そして故意ではないのだろうが、一緒に暮らしていれば当然、その姿が視界に入って来る頻度は多く、様々な場面で形の良い尻がこちらに向けられているのを目撃してしまう。

 ふとした瞬間に、こちらに突き出される尻。

 その尻を強調するようなポーズはなんだ? わざとか? わざとなのか?

 おいおい、こいつ……俺を挑発してやがる……!!

 などと思っても、決してポーカーフェイスは崩さない。

 俺も思春期のガキではないのだ。この程度で俺の俺が臨戦態勢に移行するはずもなく、表面上、常に冷静な表情を保って、フィオナの尻を背後から注視するに留めている。紳士!

 ――なのだが。

 一番の問題は出先から家に帰って来た時だ。

 家の中に入ってすぐに鼻腔を刺激する、野郎の一人暮らしでは絶対にあり得ない、何だか甘い良い香り。本当に甘い匂いなのかもよく分からないが、とにかく甘いと表現するしかないようなその香りは、強烈に本能を刺激する。

 何だこれは?

 男の思考能力を奪う成分でも含まれてんのか?

 そう思ってしまうほどに、やたらと、ムラムラするッッッ!!! のである。

 しかし、自力でこのリビドーを発散しようにも、同居人がいる状況では限度がある。そこで俺は、問題解決のための行動に出ることにした。


 ――そうだ、娼館に行こう。


 そう決意して数日後、好機はやって来た。

「――じゃあ、今日は実家に泊まるから」

 最近、フィオナはよく実家に戻っている。そうして時には、そのまま実家に泊まることもある。

 家族仲が良いのは大変良いことだ。アリサ女史も娘が頻繁に帰って来て、内心喜んでいることだろう。

 俺はそうかそうかとにこやかに笑って、フィオナを送り出した。

「りょーかい! 久しぶりに母娘水入らずで、ゆっくりして来いよ!」

「…………。……そうするわ」

 そうしてフィオナは昼間から出掛けて行った。

 リビングに戻ってソファに腰掛け、俺は【魔力感知】を全開にする。

 フィオナの魔力が知覚範囲外へ出て行ってから、さらに数分、じっとしていた。そして……、

「――今だッ!!」

 カッと目を見開くと、俺は家を飛び出した。

 現在時刻は昼。多くの娼館は夕方、日が沈む頃から明け方までが営業時間だが、中には昼も開店している店もある。俺は詳しいんだ。

 ルンルン気分で通りを小走りに進み、さらには移動の時間が勿体なくて、その内、【空歩瞬迅】を使ってネクロニアの家々、その上空を歓楽街へ向かって真っ直ぐに進んだ。

 目的の店が近くなり、俺は地面に降りる。

 いきなり空から降って来た俺に、周囲の通行人たちが何事かと目を向けてくるが、今はまったく気にならない。

 歓楽街の大通りへと足を向け、少しばかり早足で歩いていく。

 そして、遂に……!!



「あら、アーロン? こんなところで、奇遇ね」

「!?!?」



 大通りに足を踏み入れる直前、俺は声を掛けられて足を止めた。

 ギリギリと軋んだ音がするような動作で振り向けば、声の主がそこにいた。

「フィオナ……!? どうして、ここに……ッ!! 実家に帰ったんじゃなかったのかよ!?」

「帰るわよ、もう少し後でね。今は急に散歩がしたくなって、街の中を歩いてただけ」

 答えて、フィオナは俺に近づいてきた。

 わざわざ俺の真正面に立ち、下から見上げるように顔を覗き込んで来る。

「それで? アンタは何の用でこんなところに?」

 俺は……正直に答えた。

「あ、いや……ほら、最近、服の消耗が激しいだろ? だから、予備の服を買い込んでおこうと思って、な……」

 いや嘘じゃない。

 時間があれば、服も買いに行こうと思っていたのだ。

「ふぅ~ん、そう……」

 フィオナは頷き、それからなぜかにっこりと笑って。

「じゃあ、私が服を選んであげるわ。行きましょ」

 と、俺の手を掴んで、歓楽街とは逆の方向へ歩き出した。

「いやッ、一人で良いっていうか、一人が良いっていうか……ッ!!」

「服屋はこっちよ」

 ……結局この後、俺は宣言通りに服を買うことになった。

 そしてなぜか服を買った後、ギルドに用事ができたというフィオナに強制的に付き合わされ、たまたま出会ったリオンに依頼を押し付けられて――――俺の休日は完全に消え去った。






 ★★★お知らせ★★★

 極剣のスラッシュ更新、大変お待たせしており申し訳ないです!!

 上は謝罪SSです!

 ある程度書き貯めもできてきたので、書いた分の確認作業などをしてからになりますが、そろそろ更新を再開いたします。

 10/22から更新を再開し、数話は説明的な話が続いてしまうので、初日3話、二日目3話、三日目2話で更新し、以降は書き貯めあれば毎日更新していきます。

 後半は1日2日と空いてしまうかもしれません。すみません( ;∀;)

 あと何か、短くしたくて短くしたわけじゃないんですけど、短い話が入ってしまうかもです。

 そういう場合はストックと相談して、2話くらい更新できたら良いなぁと思ってます(願望)

 どうぞよろしくお願いいたします!m(_ _)m

5件のコメント

  • 楽しみな書籍化作業も大変かと思いますので、無理なく宜しくお願い致します。

    WEB版の続き、書籍共々ワクワクしながらお待ちしています!!
  • たっC様、コメントありがとうございます!(^-^)
    無理なく頑張っていきます!
    とはいえ書く事は最後まで決まっているので、あとは作者のやる気次第なところもあったりなかったり……(;^ω^)
    必要ではあるんですが説明回的な話が続くと、作者もテンションが……。
    逆にギャグや戦闘シーンとかは筆が乗るんですけどね……(;^ω^)
  • ラブ臭いがぷんぷんしてる
    ……むらむらするッ!
  • どんなに短くてもいい!!!
  • クラクラまたはむせかえる…ではなくムラムラする、なスメルで良かった。

    なんせ臭い次第ではアーロン師強制解脱…
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