櫻葉月咲

アレンは母であるアンナを探すため、生まれ育ったスラム街から街に出ていた。 しかし唐突な大雨に見舞われ、加えて空腹で正常な判断ができない。 幸い街の近くまで来ていたため、明かりの着…

時代は大正初期。 「来世こそ一緒に生きよう──必ず見つけ出すから待っていて、愛しい人」 心から慕っていたその人は、桜が舞い落ちる日に息を引き取った。 もしこの世に神が居るのなら私…

明治二年、五月。 神宮寺凛(じんぐうじ･りん)は未開の地、蝦夷は箱館に居た。 最愛の人間が逝き、思い返す事はまだ争いのなかった楽しかった日々。 当時はただのか弱い女子という「肩…

達仁（たつひと）はベッドの傍でくずおれていた。 自分の不注意で大事な眼鏡を壊し、あまつさえそれは大事な人──久司（ひさし）と出会ってすぐの頃に貰ったものだった。 それは命にも変…

六花（りっか）は幼い頃から様々な色をした毛玉が視えた。 それは人の本音で、この世の誰しもが毛玉を背後に従えている。 付き合って三年目であり、同棲中である昌人（まさと）には言って…

葉（よう）は『ヤヨイ・スズキ』という服飾系の事務所に所属していた。 小学生の頃からの夢だったファッションデザイナーの道に進んで二年目。 去年は参加出来なかったパリコレに向け、制…

文香（ふみか）は恋人である達輝（たつき）と同棲している。 リビングでくつろいでいると、深刻そうな顔をした恋人の姿が見えた。 どうやら父親から『アメリカに来ないか』と誘われたよう…

稜（りょう）と鈴葉（すずは）は自宅のデッキでのんびりと隣り合わせで日向にあたっていた。 不意に鈴葉が携帯の画面を向け、黒歴史であり思い出したくもない感情が稜の心を駆け巡る。 あ…

俺は目が覚めると、真っ白な部屋の中にいた。 箱の内側ってこんな感じなのかな、と言うほど白いそこにいきなりモニターが現れる。 仮面を付けた人間は、やや高い声で言った。 『おめで…

敦生（あつき）はこれから住む家の内見のため、とあるマンションの一室に通されていた。 元より楽しみで早く住みたい、と思っていた場所だ。 しかし隣りにいない『恋人』のことを考え、一…

巧（たくみ）が帰ると一枚の紙があった。 それは紛れもない愛しい人の字で、けれど少し雑なものだった。 不思議に思いつつも、いつも通り子供たちのお迎えに行くと双子のうちの一人から駄々…

今日この日、サヴァング伯爵令嬢であるレイチェルは嫁ぐことになった。 お相手は騎士としての顔も持つアレクシス・フォン・レオメイト公爵。 戦場では冷酷無慈悲、極悪非道と渾名される彼…

十五年前、力翔[りきと]から貰ったくまのぬいぐるみは七香[ななか]の部屋にあった。 小さな頃から七香が好きだったであろう力翔と、大人になった今付き合っている事に未だ信じられない…

儚くも美しく咲き誇る桜が舞う頃、蘭は高校を卒業した。 そうして、河川敷でとある人を今か今かと待っていた。 高校を卒業したら結婚しよう── そう言ってくれたその人を。 ❂ …

瑞希は幼馴染み兼恋人の浩人と手紙──所謂文通──のやり取りをしている。 Kiss＆Crownのリーダーとして、メンバーをまとめている浩人に休む暇など無いに等しい。 けれど、瑞希…

深夜を少し過ぎた頃。 美優は寝室のドアが開いたことで目を覚ました。 ぼんやりとした思考の中、寝室へ入ってきたのは愛しい恋人──瞬だった。 甘く囁かれ、安心しきって眠りに落ちようと…

莉沙はファッション業界で働くため、専門学校へ通っている学生だ。 学内での大規模なイベントが、あと二週間で開催される。 作品製作の締め切りは、その一週間前。莉沙はほとんどの工程を終…

校内では無口で一匹狼の昴が、学校を出ると何故か自分にだけ優しく、そして話し掛けてくる。 柚羽は昴が何を考えているのか分からないでいた。 いつもではないが、時々一緒に帰ることがあ…

咲羅と尚人は高校の時から付き合っており、今年で三年目になる。 しかし、進路を決める時期に尚人から「アメリカに行って舞台の勉強をしたい」と告げられ── アメリカへと旅立つのは一年後…

某文豪のパロっぽい何かです。はい、勢いだけで書きました。 作者もなんなのかわかってません。でも楽しかったです。 こちらを読む読者の皆さま、頭を空っぽにしてから……、いえIQを下…

晴子(はるこ)はこの日、誕生日を迎えた。 小学校へ上がったばかりの双子のひ孫とその孫、娘や息子に囲まれて過ごす一日のなんと幸せなことか。 若い頃はなかったものに感動し、もういない…

上京して五年、芸人となって五年。 夢にまでみた祭典に、山本仁喜は相方である千海裕太と共に立っていた。 数奇な運命のもとに出会った二人が、芸人となる出会いを描く、そんな物語。

柚樹(ゆうき)は普通の人間よりも特異体質だった。 第六感というやつだろう、と自分では思っている。 そんな柚樹の元に一年前、唐突に現れた黒髪の女の子。 地縛霊よろしく傍に居る沙夜(…

紗恵(さえ)には、デビューした頃から推しているアイドルがいる。 Kiss＆Crownのメンバー・ヒロトだ。 今日も今日とて、疲れ切った現代社会の犬となっていたある日。 偶然観て…

時は1864年──文久4年の2月。 神宮寺(じんぐうじ)凛(りん)は、『特例』によって奥詰という役職に就く事になった。 最初こそ新選組と共に上洛してきたが、再度京へ上る時には、…

壱也[かずや]と真結[まゆ]は小学校からの腐れ縁。 共に高校を卒業したある日。壱也から「夢を叶える為に上京する」と言われ、真結は何も言えずに引っ越す当日になった。 以後十年間疎…

幼稚園からの腐れ縁だった幼馴染みは、突然大和の前からいなくなった。 何度となく後悔しても足りなくて、幼馴染み──和音を忘れられなくて。 亡くなって十二年が経った今でも忘れられな…

【死ネタ、未来表現がありますのでご注意ください】 人はいずれ死にゆく……あの時、分かっていたはずなのに。 それでも私は前を向いて歩いていく。 貴方と来世で、今よりも幸せになる…